JR北海道で事故と不祥事が連続して発生している。9月19日には貨物列車の脱線事故。8月17日にも貨物列車が脱線事故。7月22日には特急「スーパーとかち」のエンジン付近から潤滑油漏れにより白煙が上がったらしい。
事故以外の不祥事も重ねている。7月には、30歳の運転士が乗務中に覚醒剤を使用して逮捕された。実はこの9月7日にも別の30代の運転士が、ミスを隠すため、自動列車停止装置(ATS)を故意にハンマーでたたき壊すという不祥事が発生していたことが、今回の事故取材の過程で表面化した。
同社は2011年5月に発生した脱線火災で79人が負傷する大事故を起こし、その4カ月後、当時の社長が社員に安全性の向上を求める遺書を残して自殺した。同社はこの事故のせいで事業改善命令を受けており、全社的に信頼回復を誓ったはずだった。昨年11月には安全基本計画をまとめている。
にもかかわらず今年に入り、特急のエンジンからの出火や発煙トラブルが7件も続いている。発火場所とみられるエンジン部品は紛失し、事故原因は今も不明のままだとのこと。そのため、最高速度を落とし運行本数を減らす「減速減便」を打ち出したばかりだった。
今回の脱線事故のため、21日に記者会見した工務部長は9カ所でレール幅の異常を放置したことを発表し、「重大なミスだ」と認める一方で、「なぜ放置したかは分からない」と言った。翌22日に記者会見した野島誠社長はレール異常が全道で97カ所にも及ぶことを明らかにした。この会見では、レール異常が長期間にわたって放置され続けてきた理由に質問が集中したが、同席した幹部は「失念していた」「他の作業を優先した」などとあきれかえるような釈明に終始した。
幾人かの鉄道専門家がコメントしている。「問題は人員不足にある」と。国鉄末期に採用を抑制し、人員整理も進めた。民営化後もそれを継続し、人手不足が深刻で、現場をとりまとめる中間管理職がほとんどいない。50代以上の幹部と40代以下の若手に二極化し、鉄道マンの技術・常識が受け継がれていない、といった事情だ。
本州とは違う北海道ならではの事情もある。人口密度が低い地域を走るため、大半が赤字路線になっている。厳しい自然環境に対応するためのレールの保守管理も欠かせないが、長年の赤字体質のために人員を増やせない、といったことだ。
確かに北海道の自然の厳しさは全国一だろう。その分、機械設備の痛みは激しく、老朽化が進みやすいのは分かる。本来ならもっと早く稼働率を落として保守整備を進めるべきだったのを、赤字体質と人手不足ゆえに、相対的に少ない車両をフル稼働させざるを得ないと判断していたのだろうと(好意的に見ると)推察できる。
しかしだからといって、こんなに連続して事故やトラブルを頻発させてしまったら、利用者がますます減り(実際、ニュースでは北海道の人たちの多くが「JRは怖くて乗れない」とコメントしていた)、元も子もないではないか。それくらいの常識が経営陣には働かなかったのだろうか。この組織は、上も下もおかしくなっているのではないか。