11月11日(月)に放送されたNHK「クローズアップ現代」は、「新戦略 “日本式”生活習慣を輸出せよ」。日本を代表する「次なる輸出品」は何か。番組は「それは、生活習慣だ」と主張する。今、健康や食事など、質の高い生活習慣を新興国に売り込む動きが加速しているのだ。
冒頭に紹介されるのは、中国・上海に出来たスーパー銭湯。日本では当たり前の、きれいなお湯に浸かることが大人気だという(以前にも紹介した)。入場料は大人1人128元、およそ2,000円。日本の2倍以上の値段なのに人気は右肩上がり。今や2万軒近い上海のレジャー施設の中で、ナンバー1の評判を得ている。
中国の家庭ではシャワーだけの浴室が一般的。入浴施設も多くは水質や衛生面に問題があるため、ここまできれいな湯は現地の人々には驚きだった。清潔な風呂を実現しているのが、日本式の厳しい衛生管理システム。すなわち、1時間ごとに行う水質検査、日本製の高度なろ過装置、徹底した清掃。1つ1つが、日本でじっくり培ったノウハウの塊だ。最も喜んでいるのが、女性や家族連れ。家族で楽しめるレジャー施設が少ない中国で、お風呂屋さんでくつろぐという日本的な習慣が広がり始めたのだ。
チベットで行われ始めたのは、職場での健康診断。日本の病院が設計・開発した健診車が活躍している。300キロ離れたチベットの中心地・ラサから、中学校の先生の健診をするためにやって来た。運営しているのはラサの病院で、2年前に導入した。車内には日本製の検査機器が備え付けられており、身長・体重に始まり、視力や聴力、そして心電図やエコーまで、数多くの検査を効率よく受けられる日本式の健診を実現している。
チベット卓康国際健康診断センターの王斌オーナーは「私は健診車だけでなく、画像診断の高い技術、正確なデータ管理など、日本の病院の30年以上の経験を買った」とコメントしていた。日本側のパートナーは香川県丸亀市にある総合病院。チベットでの検査データは丸亀に送られ、詳しく分析される。チベットの病院には健診料が入り、日本の病院には画像診断料が支払われる。データは長期的に蓄積し今後の健康指導に役立てていく。こうしたサービスをスタッフの教育を含めて提供し、コンサルティング料が継続的に入る契約だという。
3つ目のサービスは社員食堂。ホーチミン郊外の工業団地に、この夏、新しく出来た。手がけたのは日本の大手給食サービス会社。味がよいと評判だという。以前の食事は仕出しの弁当で、大盛りのごはんに僅かなおかずが付くだけだったのが、新たなメニューではおかずの種類を増やし、肉も野菜もたっぷり。栄養のバランスも抜群だという。味以上に高い評価を受けているのが日本式の厳しい衛生管理である(実はベトナムでは、給食サービスで食中毒がたびたび発生してきた)。
番組でも指摘していたが、懸念されるのは「真似」されるということである。表向きだけでも真似することはたやすいし、特に中韓の競争者は器用な労働者を確保するのがうまい。日本企業は当面の技術的またはサービス的優位性におごり高ぶらず、常に現状を分析し改善を続けて競争力を維持しないといけない。これもBPMのコンセプトと共通するが、その根底にあるべきなのは競争者に対するリスペクトであり、恐れである。