「自動運転」車は「夢」ではなくなりつつある

グローバル

Biz+サンデーで採り上げていたのが、ハンドルやアクセルを操作しなくても自動で走行できる「自動運転車」。実用化が進めば、交通事故の減少や渋滞の緩和につながると期待されている。自動運転技術の開発にはGMやダイムラー、BMW、アウディなど世界の主要な自動車メーカーが軒並み参入し、まずは高速道路などでの実用化を目指して実験走行を行っているところである。

日産自動車が先月27日、自動運転車の試作車をメディア向けに公開した(その日は各局で同じ画像を繰り返し報道していた)。ルームミラーなどに設置した5つのカメラやセンサーが、ドライバーの目の代りとなる。道路標識や車線、周囲の車や人などの情報を瞬時に識別し、レーザーや超音波で距離を測る。人がハンドルやアクセルを操作しなくても、試作車は速度を調節しながらカーブを曲がり、停車中の車や突然飛び出してきた人を避けながら自動で走行する。日産は以前からこうした技術開発を進めており、部分的には公開していたが、この日一挙にお披露目したのだ。同社は2020年までに自動運転車を一般向けに発売する計画という。

カリフォルニアではGoogleとSelf Driving Car(自動走行車)と車体にかかれた車が公道を走っている。みずからが収集した膨大な地図(Google Map)データを基に、カメラやセンサーを活用しながら一般道でも自動で走行できるシステムの開発を進めている。公道での実験も繰り返していて、こちらは2017年までの実用化を目指している。

一方、トヨタ自動車は日産やグーグルが目指すような、運転を完全に機械に委ねてしまうものとは異なる。国土交通省と同じで、あくまで自動運転技術は人の運転を“支援する”位置づけだ。アメリカのミシガン州で自動運転車の実験走行を行っているが、今のところ製品化の予定は示していない。いかにもトヨタらしい慎重さである。

自動運転の実現に向けては、新たな課題もある。例えば事故を起こした場合の責任問題だ。現在は、主にドライバーの責任が問われるが、完全な自動運転時に事故が起きた場合、ドライバーと機械のどちら側が責任を負うのか、議論はこれからだ。また、豪雨や吹雪の中でも自動運転車が周囲の状況を正しく把握して走行できるのかなど、技術的な課題が多く残されている。

さらに日本では、自動運転車の実用化に向けて欠かせない、公道での走行実験ができないという根本的かつ制度的問題がある。日本メーカーは、実験は海外で繰り返して技術開発を進めるが、日本への市場投入は遅れるという、薬の開発と同じような展開になるかも知れない。少々情けない。