親日国・モンゴルは急速発展中

グローバル

テレビ東京系「未来世紀ジパング」は面白い放送が多いので、ほぼ毎週録画をして観ている。8月26日(月)の放送は「大草原の国モンゴル…知られざる親日国」であった。

“大草原の国”というイメージの通り、国土の大半は見渡す限りの大草原である。しかし近代化の波はここにも押し寄せている。遊牧民が暮らす移動式の住居「ゲル」の中には世界各国のテレビ番組を楽しんでいる、ごく普通の家族の姿。その電気は太陽光パネルから、テレビ電波はパラボラアンテナを使って集めていた。

首都ウランバートルはモダンなデザインの高層ビルが立ち並ぶ建設ラッシュを迎えている。モンゴルのGDP成長率は12.3%(2年連続で世界第3位)と空前の好景気なのだ。深夜ともなると、若いビジネスマンやOLがディスコに繰り出して踊りまくっていた。世界じゅうの大都会にある同じ風景である。

モンゴルは実は知られざる親日国。これまで羊を中心とした肉ばかりを食べていたモンゴル人だが(野菜もデンプン質もほとんど摂らない)、今街では健康的な日本食が流行。しかも“から揚げ定食”や“とんかつ定食”などニッポンの定食が大人気だ(どこが「健康的」なのか…)。

しかし、出回っている米のブランドはSAKURAなど日本風を装っているが、中国米もしくは韓国米である。現実問題として港のないモンゴルにおいて、普通の値段で手に入るモノは圧倒的に中国産なのである。しかしモンゴルの消費者にとって中国産(中国人)は信頼できないモノ(者)の代名詞でもある。だからこそ日本産を装うのだが、SAKURAを買おうとした消費者に「原産地を見て」とインタビュアーが指摘して中国産だと分かると、棚に戻してしまった。彼は今後どのブランドのコメを買うのか迷うだろう。

一方、日本の食材やモノは「安心、安全」という信頼感があるという。番組では、そんなモンゴルに日本の美味しい米を届けようとする“新潟の米”の販売会社の奮闘ぶりを映していた。日本のコメを炊いたおにぎりの試食をしてもらったところ、確かに好評で、その場で2パックの新潟米が売れた。しかし問題は中国産の3倍もする値段である。せめて「〇〇割増し」程度でないと、普通の人たちにはいくら安心な日本の食材といえど、手が出ない。TPPを超えての日本農業の課題である。

ところでなぜモンゴルがそんなに親日的なのか。敗戦で満州からソ連によって連行された抑留兵や抑留民の一部が社会主義国として歩み始めたモンゴルの戦後復興に徴用され、その真面目な働き具合がモンゴル人に評価されたのが最初。当時建設された建物が今も幾つも残っている。戦後急速に復興した日本という国の底力に対する尊敬もあったろう。そして最重要な要素は、日本がモンゴルにとって最大のODA貢献を続けたことであり、それを市民が認識して感謝していることである。ここが恩知らずの中国とは全く違うところである。

話は変わってモンゴルNo.1の銀行、「ハーン銀行」のオーナーは日本人だという。エイチ・アイ・エスの創業者、澤田秀雄氏がモンゴルの破綻した国営銀行を買収し、モンゴルナンバーワンにまで成長させたのだ。日本人の銀行だということが信用につながっているというのが実に嬉しい。きめ細やかな日本式経営が功を奏したのである。中でも異色の取り組みが“遊牧民ローン”。これまで難しかった、遊牧民が銀行にお金を借りることを可能にした、その方法とは「飼っている羊そのものを担保にすること」。素晴らしく実践的である。

番組最後に掲げられた「未来予測」は「第2のサウジアラビア」であった。「モンゴルがサウジアラビアに匹敵する存在になる可能性がある」と「沸騰ナビゲータ」後藤・日本経済新聞社編集委員は言うのである。最近、銅・金・石炭といった地下資源の埋蔵量が世界最大級と確認されたのだ。この地下資源が開発されれば国民に富をもたらし、国民の購買力が広がる。親日・モンゴルは日本企業にとって魅力的なマーケットになろう。

唯一の心配は、この豊富な地下資源の存在を知った中国が、尖閣諸島と同様に「この土地はもともと中国のものだった」と言い掛かりをつけて侵略するのではないかということである。チベットでさえ強引にせしめた彼らである。モンゴルにとって豊富な地下資源の発見がアダにならなければよいが、と祈らずにはいられない。