急拡大する家事代行サービス

ビジネスモデル

8月8日(木)放送のテレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」で採り上げたのは家事代行サービス。知人でこのサービス会社を立ち上げた人がいるので、興味があった。

番組では、家事代行サービス「ベアーズ」のスタッフ・針ヶ谷さんを追う。彼女は隔週水曜日に顧客自宅で3時間の家事代行を行なっている。費用は3時間交通費込みで1万1295円。帰宅した顧客・平井幸子さんは「家事代行サービスで娘と遊ぶ方に時間を使いたい」と述べた。

家事代行サービスを運営する大手の「ベアーズ」では20~80代の女性たち4300人が働いているという。いやはや随分広い年齢構成だ。同社の特長は従業員の経験や技術を詳しく記録した人事システムを持っていることで、これにより顧客の満足向上につなげることを目指している。会社では家事のプロとしての心構えでなく、掃除やアイロンがけなど実技を学ぶ研修が行われていて、合格した人のみが「ベアーズレディ」と呼ばれる。顧客の利用頻度は平均で週1回。この企業の売り上げは8年間で12倍と急成長している。

全日空では40社の家事代行サービスを福利厚生として社員に提供している。同社の社員は半数以上が女性で、そのうちの4人に1人は子育て中の母親。人事部の槙田あずみ室長は「ストレスを抱えながら家事に追われるのではなく、人の手を借りていくこともやり方の一つだと伝えている」とコメントしており、このサービスへの期待が高いことが窺えた。

この番組で知って面白いと感じたのは、ダイエーの売り場で、家事代行サービスを手がける「ベアーズ」の利用券を5月から34店で販売していること。お試しやギフトでの利用を狙っているとのこと。ダイエーの業態開発部の藤野部長は「店に商品を並べるのではなく、サービス提供にも販路を広げたい」とコメント。ダイエーとベアーズは訪問先で日用品を販売するといったコラボサービスも検討しているそうだ。

家事代行サービス市場は2010年度には290億円だったが、経産省は将来的に1720億円と予想している。この家事代行サービス市場に魅力を感じる異業種の事業者もいるという。なるほど参入障壁は意外と低そうである。しかし参入障壁が低いということは、質の悪い業者も多いということでもある。たちの悪い業者やスタッフによる盗難や傷害といった問題も、今後発生しかねない。

そんな課題を抱える家事代行業者が集まり、業界団体を設立する会合が開かれたところも番組は映した。団体では自主的なルールを設けることで、他人が家の中に入るという利用者の不安を解消し、サービスの向上を目指すとしている。山田長司会長は「関係官庁には許認可で事業を行なってほしい」とコメント。既存業者とすると、「規制産業」化すれば参入障壁が築け、利益率の維持・向上が見込めるようになるだろう。

利用が増える家事代行サービスについて、番組コメンテータの高橋進氏は「家事代行市場は働く女性を支えるために広がっていく。介護保険サービスの見直し、グローバル化の進展で日本にもっと外国人を誘致すればさらに市場は拡充するだろう」とスタジオトークでコメントしていた。家事代行サービスがあることで外国人家族が日本への赴任を不安なく受け容れるようになれば好循環となろう。