ニッポンの町工場の挑戦と目利きの必要性

グローバル

8/6(火)のガイアの夜明けは「不屈の町工場…世界を驚かす!」というテーマ。日本のものづくりを支えてきた町工場のほとんどが大手メーカーの下請け部品を作ってきた。しかし近年、大手メーカーが生産拠点を海外に移転する動きが加速したため、経営不振に陥る工場が相次いでいる。そんな中、長年培った技術を生かしてオリジナルの製品を開発しヒットを飛ばす工場、海外へ打って出る工場も現れている。

欧米のレストランや雑貨店で評判を呼んでいる食器がある。ぐにゃぐにゃと自由に形を変えられる皿やかごであり、スズでできた食器だ。作ったのは富山県高岡市の銅鋳物メーカー、「能作」。創業以来、仏具、茶道具メーカーの下請けを続けてきた。しかし年々受注は減少し、売り上げはかろうじて横ばい。4代目社長の能作克治さんは、自社商品を作る事を決意。純度100%のスズを使った食器が世の中にないことに注目、独自の鋳造技術で開発に成功。まずは日本の百貨店に出したところ、たちまち人気商品になった。さらに海外にも積極的に売り出し、今では欧米や中東などに輸出しており、さらなる市場拡大に乗り出している。

愛知・名古屋市の鋳物工場「愛知ドビー」。戦前から続く工場だが、下請けの仕事が激減し経営難になった。この工場を救うため、前社長の息子2人(土方兄弟)が大手企業を辞めて経営者として戻ってきた。そして精密な鋳造技術を生かして、自社商品のホーロー鍋「バーミキュラ」を開発。この鍋の密閉性は非常に高く、水なしで素材から出る水分だけでおいしく調理できる「無水調理」ができる。評判は広がり、今や15か月待ちの大ヒット商品に成長、工場は息を吹き返した。
前回の番組終了後、生産体制を増強した土方兄弟は海外市場の開拓に乗り出すことにした。狙いは米国市場。しかし市場調査をしてみると、サイズやデザインの好みが日本と違う。そこで新商品を開発することを決意したのだが、サイズが大きいために密封性を保つのは至難の業。それでも新しい製品を開発し、再びアメリカに乗り込む姿を番組は追った。

次は岐阜県山県市で水栓バルブ部品を長年下請け製造してきた田中金属製作所。リーマンショックで親会社が吸収合併され、注文が10分の1に激減した。起死回生を狙い独自の「節水シャワーヘッド」を開発。従来の半分の水量でシャワーが使えるようになるだけでなく、細かい泡を発生させることで汚れを落としやすくなる。特許も取得した。今夏から本格的に売り出し、国内の大型雑貨店でも売れ、水道代を節約したいスーパー温泉などでも引っ張りだこになるほどのヒットになった。

次は海外進出。しかも水不足の国として狙ったのがシンガポール。国民に節水要請が出されるなど、水不足は深刻。「自分たちが培った技術が多くの人々の役に立てば」と乗り込んだが、現地のホテルでは随分大きなシャワーヘッドが好まれると断られる。何も得るものなしに帰国くるのも癪なので、(ホテルの女性スタッフのアドバイスに従い)同社のシャワーヘッドを好んでくれる可能性があるのは女性だと見定め、現地のエステサロンに飛び込み営業を掛ける。結果は受注成功。海外展開の足掛かりを得たのである。

この番組で紹介したような成功例はまだまだ例外的存在である。素晴らしい技術を持ちながらも、マーケティング戦略の観点を持たないがために事業機会を逃し、悪ければ倒産してしまう会社がまだまだ少なくないようだ。金融機関や役所に目利き能力があったのはとうの昔の話。早めにプロの助けを呼ぶべきだろう。