7月4日(木)にBS-TBSで放送された「夢の扉+」は「素材革命!木材が金属やプラスチックに変わる!?~革新的加工法で、堅い木材を自在に変形できる“エコ技術”~」という内容で、なんとも驚きの回であった。
主役のドリームメーカーは産業技術総合研究所の金山公三さんという技術開発研究者。もともと、金属加工の研究者だった。「金属の次の素材を研究しないか」との上司の相談をきっかけに“木材”に目をつけた。しかし通常、木材はどんなに強い力で圧縮加工しても、元の形に戻ってしまう。それが木材のよさでもあり、工業用素材としての弱点でもある。
金山氏がまず試みたのは、木材を粉末にして固める事だった。ところが粉末をプレスしただけでは工業製品に求められる強度にはほど遠い。彼は条件を変え実験を繰り返した。するとある日、いつもと違う結果が起きた。成形した表面がスベスベになってきたのである。今までにはない堅い塊ができていた。彼はあらゆる観点から分析し、ついに木材のメカニズムを突き止めた。
ポイントは木の細胞の間にあるリグニンという成分。ある薬剤を染み込ませ熱を加えてプレスするとこのリグニンが柔らかくなる。すると一つ一つの細胞が分離し、滑り動く(映像で見せられて、その不思議さに見入ってしまう)。さらに熱を加えると、木はその形のまま固める事が出来る。金山氏は偶然発見したこの現象を見事、技術として確立した。
この『流動成形』技術を使えば、幾つかの木片からも美しいお猪口ができる。種類の違う木も一つに成形できる。衝撃に強く、難燃性も断熱性もある製品が生まれるかも知れない。特に驚きだったのは、木片からステレオスピーカのコーンのような薄い製品ができてしまうことだ!
金山氏が実用化に向けた共同実験(協力に応じたのはサッシの三協立山)に臨む様子が放映された。窓枠のサッシに使われているアルミを、木材に代えるというもの。細く、長く、強く。条件は厳しいが、まるで金属のような固い棒が成形された。見事、実験は成功。
この技術により大量生産ができるため、木が(資源に制約される)金属やプラスチックに代わる原料として期待されている。さらに持続的に木材を活用できるため、衰退したニッポン林業の再生・活性化にもつながる。是非、成功して欲しいものだ。