ヤマダ電機によるベスト電器買収

ビジネスモデル

ヤマダ電機がベスト電器を買収すると正式に発表した。直前にも観測記事があったのでサプライズではないが、先日のビックカメラによるコジマ買収に続く、「業界再編第2の波」として注目されている。

これでヤマダ電機グループはさらに巨大化が進み、業界2位に浮上するビックカメラ・グループを大きく引き離すこととなる。元々コジマがビックカメラの軍門に下ったのも、規模の劣位にあった同社の社長が、以前から連絡を取っていたビックカメラ傘下に入ることで(会社?個人?の)生き残りを図った策である。

実はビックカメラとしては少し思惑が違ったのではないか。というのも、ベスト電器は以前、資本提携相手としてヤマダ電機とビックカメラを秤に掛けて、後者を選んだ経緯がある(現時点でベスト電器の筆頭株主はビックカメラである)。つまりビックカメラとしてはグループに引きこんでいるつもりだったベスト電器を、まんまと最大のライバルにさらわれてしまったのである。

この買収が、6月に実施されたばかりのビックカメラによるコジマ買収の直後に発表されたことも、きな臭いものを感じさせる。つまりビックカメラ‐コジマ連合が一挙に2位に浮上してきたことに危機感を抱いたヤマダ電機側が、一旦自分達を袖にしたベスト電器経営者と水面下でコンタクトを続け、一挙に勝負に出たのだと考える。

つまり、それまでちらつかせていた買収(増資の株価)金額を一挙に引き上げたのだろうし、ベスト電器はそのオファーの魅力に抗し切れなかったのだろう。一部の報道がいうように、ビックカメラがコジマ買収に走ったのでベスト電器が離反したという見方は、(コジマとベスト電器のカバーする市場があまりカブらないことを考えれば)見当違いである。

ベスト電器は、ビックカメラ連合に入りながらも、期待したほどの規模の経済を享受できなかったのではないか。家電エコポイントが終了した上に薄型テレビの重要が一気に萎え、家電量販業界は収益の新しい柱を未だ見出していない。九州に本拠を置くベスト電器もまた、相当苦しい経営を余儀なくされていたようだ。今回のヤマダ電機に対する第3者増資で得た資金の大半を店舗リストラに使うそうだが、それだけ不採算店が多いという証左である。

しかし端的に言って、こうした資本再編による仕入れ規模の大型化とその注入資本による店舗リストラだけで、ベスト電器とコジマが再生すると見るのはナイーブだろう。家電量販業界は今、ビジネスモデル自体を見直すべき時期に来ている。従来の大量仕入れ・大量販売による家電メーカーからの「中間搾取モデル」はもう限界に近付いているのだ。家電量販店自身が生む付加価値を考え直さないと、高齢化して従来の延長上の家電重要が縮み続ける国内市場では収益機会はますます減ると覚悟すべきだ。