総合コンサル会社と総合病院

BPM

ある案件で、いわゆる「総合コンサル会社」とバッティングしそうである。個別の事情を具体的に明かす訳にはいかないので、ここでは省く。しかし総合コンサル会社と専門コンサル会社のどちらがどういうときには望ましいのか、というのは結構難題かも知れない。

コンサル会社経営の立場からすると、総合化するニーズは強い。単純に会社を大きくしたいという子供っぽい動機もさることながら、経営安定化や仕事平準化のためにメニューを幅広くしたい、ということから総合化に向かいやすいのである。一方、デメリットも小さくない。特長がなくなり差別化しにくくなる(クライアントに推奨しているのと逆の行動である)。しかも若いコンサルタントは、一向に専門性は高まらない(この理由を詳しく書くと、「営業妨害」と非難されかねないので、割愛する)。中堅以上の専門性を持ったコンサルタントが抜けてしまい、誰もまともな経験も自信もない分野がサービスメニューとしては相変わらず掲げられているというケースすらあるくらいである。

ではクライアント企業から見たときの「総合コンサル会社」が選ばれる理由とは何だろう。例えば、全社のIT基盤の見直しをやるとしたら、IT全般に関する総合的アドバイスができる総合ITコンサル会社が望ましいという理屈は納得できる。実際のところ、ITに関するテーマ毎に別々のコンサル会社に相談するなんて現実的じゃないし、大体どこで切り分けるのが適切なのか、クライアント企業では判断しにくいだろう。

しかしBPM絡みでは、事はそう単純じゃない。業務改革および将来にわたって業務改革を続けるための仕組みを検討する、そこで出てきた「あるべき業務プロセス」や「そのためシステム基盤に求める要件」を明確化するという「BPM絡みの上流工程」については、非常に専門性が高く、しかもIT基盤の話と切り分けがしやすい。その「上流工程」と、BPM実現へ向けての継続的改革支援だけを切り出して我々にさせて、IT基盤の見直し全般は総合コンサル会社にしてもらうと、いわゆる”Best of breed”(いいとこ取り)になるのだが、さてどうだろう。

こうしたまともな理由で「総合」か「専門」かを選ぶのであればいいのだが、実際には「どこに話を聞けばいいのか分からないので、従来から付き合っているコンサルのセンセに聞いてみる、という「ワンストップ・ニーズ」も多いだろう。しかし実際には、少し調べたらそんな情報はすぐに得られる時代だ。これは明らかに経営者または担当者の怠慢である。

専門性があまりない総合コンサル会社に拘泥するというのは、どんな病気でも近所の総合病院に行くようなものである。その総合病院が診察したところ、自分たちが得意でない症例なら他の専門的病院に紹介してくれる、といった極めて良心的なケースは少ないだろう(全く手に負えない場合は別だが)。たとえ経験が少なくとも、自分たちの経験値を上げるためには多少自信がなくとも手掛けるのが普通だろう。

その意味で、コンサル会社と病院の行動パターンはよく似ている。但し、総合病院には最先端の各種検査機器があるので原因不明の病気の際に検査をしてもらうのに適しているが、総合コンサル会社には(診断ツールと称する問診票はあるが)そんな都合のよい魔法のハイテク杖はないことは知っておいたほうがよいだろう。