“自由診療ビジネス”の闇は深い

ブログ社会制度、インフラ、社会ライフ


今週末には総選挙の投開票ですね。私は、「減税」を公約に掲げている政党には投票しません。なぜなら、それは耳障りがいいだけのバラマキ策であり、「今の世代が楽をするために次世代に借金を積み上げる」ことを意味する政治的無責任の現れだからです。

話は変わりますが、健康や美容への関心が高まる中、(公的な医療保険が適用されない)自由診療を提供するクリニックが急増しており、トラブルが相次いで死亡事故も起きていることをご存じでしょうか。

NHKの『クローズアップ現代』の取材班によると、医師以外でも設立できる「一般社団法人」のクリニックが増えています。医師の“名義貸し”まで横行し、専門外の医師が自由診療に流れているといった、ひどい実態も明らかになってきました

2023年度、全国の消費生活センターなどに寄せられたトラブルの相談件数は、およそ6,000件。この5年間で3倍近くに急増しています。

事実として押さえておかないといけないのは、一般社団法人が運営するクリニックは298件。多くがコロナ禍の前後に設立され(店を開けない飲食店経営者などが参入?)、この5年間で6倍に急増。そして、その6割以上が美容医療を行っていることです。

一般社団法人のクリニックが急増しているのはなぜか。一般社団法人のクリニックは、医師が代表を務める必要がある医療法人と違って、誰でも経営に参入することができます。一般社団法人は、登記すればいつでも設立が可能な上、クリニックの開設後に事業内容を報告する義務もありません。

<美容クリニック 採用担当の話>
「医療法人のように医師をトップに置く機関になりますと、医療倫理や医療安全を最優先にして運営しないといけないとなるのですが、一般社団法人になりますと、一般的な業種の人が利益を重視して運営できるので、収益を目指すなら、一般社団法人が都合がいい」

かなり怖い話です。


チェック体制について言えば、医療法人の監督官庁は都道府県になりますし、報告義務が定期的にあります。一般社団法人のクリニックを設立する際にも(医療法人同様に)保健所の審査を受ける必要があります。

開設許可は各地の保健所がそれぞれ判断するのですが、統一的なルールもガイドラインもなく、審査にばらつきがあるというのが実態。要は必要な書類さえ整っていれば許可せざるをえないということです。

また、一般社団法人には監督官庁がない上、クリニック開設後に定期的に監視する仕組みもなく、いわばブラックボックス状態だということです。制度そのものに問題があると言わざるを得ません。

利用者としては、一般社団法人のクリニックで自由診療の美容医療を受けることのリスクをよく考えたほうがいいということです(私なら家族にそうしたリスクは取らせませんね)。

NHKのサイトには「自由診療を受診するときのチェックのポイント」というページまでありました(ご親切に)。下記に美容医療の場合のポイントだけでも挙げておきますね。

▽予約前に確認したいポイント

ホームページに医師の名前や写真が載っているかどうか

美容外科の施術を受ける場合は「形成外科専門医」を取得しているなど外科医としての経歴があるかどうかが1つの目安。

受けようとする治療や施術が未承認薬や適応外治療ではないかどうか

同じ薬や治療でもほかの病院では未承認と書いてあるのに、全く書いていないクリニックには注意が必要。

▼SNSの情報だけを信用しない

執刀医のフォロワーが多かったり、インフルエンサーが宣伝していたりするクリニックだからといって、技術や専門性が高いとは限らない。

ほかのクリニックに比べて極端に値段が安いかどうか

ほかのクリニックの施術と比べて極端に安い場合は、実際にその価格で治療を受けられないこともあり、注意が必要。


▽クリニックを受診してから注意するポイント

医師が出てこずに治療方針が決まる場合は要注意

医師が副作用やデメリットについてももれなく説明してくれているかどうか、医師から直接施術内容を聞いて自分が理解できるかどうか注意が必要。

無理に当日の施術や契約を強要される場合は一度自宅に帰る

カウンセラーなどから「今すぐ施術が必要だ」と不安をあおられても、その場で契約・施術をしない判断が大切。

手術を受ける場合は医療安全の体制が整っているかどうか確認を

具体的には、入院できる体制や体調が急変したときに執刀した医師と直接連絡が取れる手段を確保しているかどうかなどをクリニックに確認。


要は、「自分の身は自分で守れ」ということに尽きます。