いきなりですが、私は人材派遣ビジネスや人材紹介ビジネスの会社が嫌いです。
確かに利用する会社も派遣・紹介される人材も少なくないので、社会的価値がない訳ではありません。でも冷静に考えてみれば、いずれも「中間搾取ビジネス」なのですよね。
出演したFor Japanの番組でも「少子化の原因の一つは、都会に住む若い人たち(特に女性)の少なくない割合が派遣社員のために年収が少なく、結婚に踏み切れないため」と伝えています。Insight Nowの記事でも、同様の意見を時々発しています。
つまり人材派遣ビジネスというのは大きな視点で見れば、自分たちの利益を優先して社会を壊している、非常に罪深い存在だということです。もちろん、派遣されている人材のほうは悪い訳ではなく、むしろ「中間搾取されている」、いわば無自覚の被害者なのですよね。
それに対し人材紹介ビジネスというのは「給料が上がらない沈滞した会社」から「仕事が増え過ぎて、自社の募集だけでは実力の要るポジションを埋められない」会社に向けて人材を流動化させることで人材構成の新陳代謝を促すビジネスです。長い目で見れば賃金の適正化を促し、本来なら社会にとって有意義な存在のはずです。
でも多くの業界(特に看護・介護や美容や飲食など、人手に頼らざるを得ない業界)では、登録者に次から次へとジョブホッピングさせ(そのためのインセンティブが用意されているのです)、紹介手数料を荒稼ぎしている業者が跋扈しているのが実態です。業界の弱みに付け込む、とんでもないやり方ですよね。
個人的にも何度か人材紹介ビジネスのご厄介にもなっていますので、よい会社もあればひどい会社もあることを知っています。結局、個々の人の人脈・力量・倫理観に思い切り左右される、非常にプリミティブなビジネスだと思います(偉そうに言いながら、コンサルと同じだと気づきました)。
ということで、私は人材派遣会社が好きになれず、したがってコンサルティングで支援する対象としては、端から人材派遣業界を外しています。
人材派遣ビジネスや人材紹介ビジネス以外に、「中間搾取」の点で注目されているのが「多重下請構造」の業界です。典型的にはIT業界と建設業、そして物流業界です。
IT業界はどこでどんな仕事が発生するかをエンジニアには分からないので、大概は会社に所属します(最近はココナラやLancersなどで仕事を受ける個人事業主のエンジニアも増えてきましたが)。でも会社自体の規模(信用や、構築プロジェクトの編成対応力も違ってきます)や営業力に雲泥の差があるので、長い間に「多重下請構造」が形成され定着しています。
建設業界は大きくないと設計力・技術開発力が高まらず、そして人工(にんく)集めの能力の違いから、大手と中堅・中小の格差は広がるばかりです。自ずと(IT業界と同様に、いやそれ以上に)「多重下請構造」が固定化しています。
そして物流業界は、元々は地域つながりの強いビジネスだったのが、高度成長期を経た後の1990年にいわゆる物流2法(貨物自動車運送事業法・貨物運送取扱事業法)が施行されて経済的規制が大幅に緩和されたため、小さな事業者が増え過ぎたことで一挙に「多重下請構造」が固まったのです。要は、底辺層を占める存在が安定的に確保できるようになったため、「子請け」(2次請け)の位置が成り立つようになってしまったのです。
IT業界、建設業、物流業界とも、発注主から親請け企業への発注金額は悪くないのです(納期条件などは無茶苦茶キツイのですが)。でもそれが子請け・孫請けになればどんどん減り、末端の孫請け(またはひ孫請け)会社の作業者に落ちてくるのは「雀の涙」程度になってしまうのです。
客観的に見れば、中間に存在する子請け(2次請け)なんかは、ほとんど何の付加価値も提供していないのに、人脈や関係性だけでしっかりとおこぼれ的な手数料をせしめるのです(だからそうした会社は営業が多く、作業者は少ないのです)。これ、発注主と実際の(末端の)作業者の視点からすれば理不尽ですよね。
さすがに親請けや孫請けを外す訳には行かないとは思いますが、本来なら、大して役に立っていない子請け(2次請け)を外して、その分を実際に役に立っている作業者に対し上積みして上げて欲しいところです。
だから私はこうした理不尽な「多重下請構造」も「中間搾取」も嫌いなのです。
PS 最近、ウチで利用していた人材派遣の人から、直接働きたいという方が出現しました。嬉しいですね。
でもそれに伴って、ウチの苦手な事務手続き仕事(今回は労務!)があれこれと発生しただけでなく、様々な経費が新たに生ずるようになってしまいました。そして極めつけは、人材派遣会社から目の玉が飛び出る手数料請求が届きました(ある程度の想定はしていたが、はるかに超えている…OMG…!)。いったい彼らが何をしてくれたというのでしょうか。やっぱり私は人材派遣会社を好きになれそうもありません。