ガソリン補助金の功罪とバラマキ政治家の罪

ブログ社会制度、インフラ、社会ライフ

岸田首相が8月30日に、ガソリンや軽油の値上がりを抑制するための卸に対する補助制度を延長・拡充することを表明しました。9月末までのはずだったのを年末まで延長、補助の規模も大きくするそうです。

当制度は昨年1月に始まり、既に4回も延長しています。「緊急避難的な激変緩和措置」のはずが、今回の延長で2年続くことになります。先月決めたばかりの来年度予算の方針では、こうした対策は段階的に縮小・廃止し、影響の大きい層への支援に絞ると宣言しておいて、「舌の根も乾かぬうちに」とはこのことです。

確かにガソリンの店頭価格は過去最高を更新し、音を上げる消費者や事業者の声が聞こえていました。うちのカミさんだって文句を言っていました。でも一律値下げを促す今の方式では、経済的に余裕がある層や、気晴らしに首都高を走り回るような暴走あんちゃん達も、そして好業績で潤っている企業も同様に、皆恩恵を受けます。

まさに典型的なバラマキ政策であり、(クルマ社会である地方の)地元の支持層にいい顔をしたい自民党のセンセイたちの顔を立てるため、岸田首相はコロッと方針を変えてしまったのです。これにより先進国で最悪とされる財政をさらに傷付け、(目先のガソリン価格の値下げを喜ぶ単純な人たちもいずれ悲鳴を上げる)将来の増税を招く愚かな策です。

実はガソリンスタンド経営者の多くも迷惑しています。こうした補助金が出るまでのタイミングでは消費者・需要者の買い控えが起き、需給バランスは急変動します(その対応で余計にコストが掛かります)。諸コストの上昇から本来はさらに値上げしたいところを、補助金支給額通りに値下げしないと客離れにつながりかねないので、我慢することが今後も続くことになりそうです。

そして本来なら値上げで抑制されるはずの消費が促進され(つまり市場機能を歪ませ)、省エネや脱炭素化の努力の足を引っ張るものです。G7の他の国では、こうした「激変緩和措置」の補助金はとっくに終了しています。日本だけが逆行しているのです。

このガソリン価格抑制のための補助は12月末まで延長、その費用たるや少なくとも3千億円の追加です。それとは別に9月以降に補助を段階的に拡充し、10月中には175円程度の店頭価格を実現すると岸田首相は宣言しています。また、やはり9月末までとしていた電気と都市ガス料金の激変緩和措置も継続すると表明しました(こちらの費用は少なくとも5千億円だそうです)。

政府がなぜこんなに気楽に補助金を出せるかというと、既に計9.3兆円も計上されている予算から充てればいいので、新たな予算措置が必要ないからです。でもその出所はすべて我々国民・企業からの税金なのです。

こんな巨額のバラマキをする代わりに、その歳出予定分を再生エネや水素利用などエネルギー構造の転換を少しでも早く進めるために使うほうがずっといいですし、日本の社会制度が崩壊しかねない問題である少子化対策として若い世代のために投じてくれるほうがずっと有難いです。

こんなふうにいつまでも目先を誤魔化す政策ばかり優先しているようでは、日本の社会・経済の回復は遠のくばかりです。岸田首相、頼みますよ。目を覚ましてください。