チャットGPTおよび生成系AIに関する話題が世の中で急増しています。
日本は産業界が積極的に取り組んでいるだけでなく(オープンAIとの提携話やAPI利用が米国企業に次いで多いそうです)、政府も前のめりになって「(他国に比べ劣っている)生産性を上げる手段としてどう活用するのか」の議論が先行しています。一方で欧州先進国政府や欧米の諸NPOが生成系AIに関する懸念や課題を真剣に議論しており、欧米民間企業は水面下で活用や検討を進めながらもその行方を見つめている格好です。
私も知り合いのコンサルタント等から助言を求められましたが、私見はとっくの昔に公表済です(『AIに関する誤解と「嘘」と隠れたメリット』)。
生成系AIが進化したことで実用範囲が一挙に広がったことは事実ですが、未来像が変わった訳ではありません。要は「AIは『知識と馬力を要する』仕事には向くが、『知恵を要する』仕事には向かない」というものです。
チャットGPTの文章力やプログラム作成力は概ね「大学2年生のレベル」だと言われます。つまり大学生アルバイトを雇っているような感覚で、レポートやプログラムのたたき台を作成させるような使い方には最適です(英文作成だったら、日本語の指示を理解するアメリカ人学生並みです)。だから考えの浅い処があるのは事実ですが、懸命に片っ端から調べてきているので論点の抜けは意外と少ないのです。
しかも人間のアルバイトだと草案完成に短いものでも半日、長いものなら数日かかりますが、チャットGPTなら1分足らずで答が返ってきます(答がトンチンカンな場合、自分の尋ね方が不適切なこともすぐに判明します)。
そして肝心なことは、チャットGPTが出してくる回答はあくまで「草稿」に過ぎず、通常は「一般論」であるということです(「一般論」でなく「個別解」を出させるための方法論もちゃんとあります)。それを「たたき台」にして、担当者が自分の見解や「知恵」を加えて編集すればよいのです。
これなら知財問題も乗り越えられますし、うまく使えば大概の企業・団体の現場で一挙に生産性を上げることが可能になるでしょう。
なお、世の中で議論されている生成系AIの課題の大半は「議論のための議論」に過ぎませんが、犯罪等への利用に関しては真剣に予防法を考えておくべきです。
例えば、外国人詐欺集団がフィッシング詐欺に使う文章を日本人共犯者抜きで作れるようになりますし、国内では知られていない犯罪方法を適用することもできかねません(一応、反倫理的な質問には答えないようチャットGPTはプログラミングされていますが、それを回避する方法=Jail breakingの研究が裏サイトでは進んでいるそうです)。これこそ「イタチごっこ」で、悩ましいことです。