先週に引き続いて、The Ownerという経営者向けウェブメディアの『経営者のお悩み相談所』というコーナーで執筆した相談応答記事について、なぜそうした見方をしているのか、その意義や背景などをお伝えしたいと思います。
今回は第6回の記事『シリーズA直前のスタートアップとしては人員強化のための採用はいつ頃に行うべきか』についてです。
【今回のご質問】
シリーズA直前のスタートアップです。人員強化を目的として人事の採用はいつ頃に行うべきでしょうか?
記事は次のように始まります。
スタートアップ最大の悩みは、資金と人材という2大リソースに関する制約。人員強化のための採用というのはこの先の成長に不可欠な手段であり、その両方の制約を睨みながらバランスをとって進めるべき重要なテーマです。まずは自社が今どういうステージにあり、そのために何をすべきなのか、から整理してみましょう。
現状ステータスと投資家の期待を確認する
質問者の業種はIT業界とのこと。もしかするとネット系サービスの企業かも知れませんし、ソフトウェア開発の会社かも知れませんし、半導体などのハードウェア系かも知れません。ただの「ベンチャー企業」ではなく「スタートアップ」と自称するからには、将来の目標は上場程度ではなく、急成長して特定業界での世界市場を狙う意気込みだと推察致します。
・・・と、まずは質問者の会社の位置づけから確認しています。続いて…
他の読者のために若干補足しますと、スタートアップにとっての「シリーズA」とは、成長段階ごとに出資金を募る「投資ラウンド」における3番目のステップです。エンジェル、シードと来て、シリーズAを経てその後シリーズB、C…と続いていきます。一般的には「シード(種)ステージ」に続く「アーリー(早期)ステージ」に位置していると考えられます。
一つ前のシードステージではα版プロトタイプしか出していなかったのに対し、このアーリーステージでは典型的に、アーリーアダプター向けに製品・サービスの初期プロダクト(α版、β版)をリリースして高評価を得ることが期待されます。そしてこの後の「ミドルステージ」におけるシリーズBの資金調達を得て、機能拡張したプロダクトによって一挙に市場認知と顧客層拡大を狙う、というのが望ましい成長シナリオです。
要はこのシリーズAというのは、市場に初めて打って出るための製品・サービスを完成させるため、そしてそのための体制を作り上げるために必要な資金を調達する、非常に重要なイベントです。
質問者の会社はそのシリーズA直前ということですから、シードステージで行うべき「プロトタイプによる製品(またはサービス)のコンセプト検証」は既に済み、既存投資家の納得を得られた状態にあるのだと考えられます。そして次のアーリーステージに向かおうとしている訳です。
・・・と、スタートアップやベンチャー企業特有の資金調達に関する基礎知識を読者と共有することで導入部としています。この辺り、門外漢の読者にとっては敷居が高い部分ですが、何とか話を理解してもらおうという苦労の跡です。
事業計画における人員採用計画の立て方は?
こうしたステータスにおいて、人員強化を目的とした人事採用はいつ始めるべきか、というのが今回のご質問です。結論的に言えば、「シリーズAにて資金調達した後、事業計画に沿って」というのが基本原則です。
・・・と、いったんは結論を出しています。しかしそれでは言葉足らずだし、しかも質問者の意図を十分汲んでいない回答になってしまうかも知れませんので、言い換えています。
でも、もしかするとご質問の趣旨は「そのシリーズAに向けての事業計画を策定しようとしているのだけれど、その重要要素の一つとしていつ人事採用を始めることにすべきなのか、どういうロジックや手順でそのタイミングを決めるのかを知りたい」ということなのかも知れません。こうした場合、逆算で考えてみると大概は答が見えてきます。
ここで、比較的考えやすくするためのアプローチ(考え方の切り口)を提示しています。ここからが本テーマの本番で、資金調達を控えているとかスタートアップであるとかの事情がなくとも、似たような状況にある会社にとっては参考になるかと思います。
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