ホテル清掃業、コロナ禍でも本業にこだわるべき?それともリスクをとって新事業に挑むべき?~The Owner『経営者のお悩み相談所』の第1回記事に関する解説~

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The Ownerという経営者向けウェブメディアの『経営者のお悩み相談所』というコーナーで執筆した記事を時々ご紹介してきました。でも必ずしも内容の解説をしていませんでした。そこで、そうした過去に書いた相談応答記事について、なぜそうした見方をしているのか、その意義や背景などを(多分、時々ではあるものの)お伝えしたいと思います。

今回は第1回の記事『ホテル清掃業、コロナ禍でも本業にこだわるべき?それともリスクをとって新事業に挑むべき?についてです。過去のブログで紹介した際には第4回の記事と一緒に紹介だったので、相当端折っていましたが、今回は多少深掘りしたいと思います。

【今回のご質問】

清掃業を経営しております。現在、ホテルでの清掃作業は定期作業がなくなりつつありますので、商品販売、ネット販売にシフトしたいと思いますが、消臭剤の販売という大きな市場に参入することを考えています。ランチェスター戦略だと「集中」だと思いますが、この危機的状況で、ホテル業界の回復を待つ方がいいのでしょうか?それとも、新しい事業、業界に力を入れることが必要とお考えでしょうか?

記事は次のように始まります。

「既存事業に集中すべきか、新事業に挑むべきか」。これは殆どの企業にとって簡単に答の出ない、悩ましい問いでしょう。ただ、考え方の原則のようなものは幾つかあります。

「既存事業に集中か、新事業に挑むべきか」は本来、永遠の課題

質問者の業種は「ホテル清掃業」とのこと。したがって質問は大きく分けると、「『ホテルの清掃事業』という既存事業に留まって顧客のホテル業界の回復を待つべきか」または「『消臭剤の販売(ネット販売を含む)』という新事業に挑戦すべきか」という2者択一の選択を問われているのだと判断します。

通常、こうした「既存事業に集中すべきか、新事業に挑むべきか」という選択はほとんどの場合、様々な要素を検討しないと適切な仮説さえ導けない、難しい判断事項です。しかし本件(の趣旨の半分だけですが)に関しては例外的に、蓋然性の高い方向性が比較的簡単な検討でも出てきます。それを最初にお伝えしたいと思います。

・・・とまぁ、導入部としてはちょっと不思議な、謎掛け的な言い方をしています。でもこの後の文章を読んでいただくと、すぐに納得いただけるかと思います。

自分が置いた選択肢の前提は何か、を考えてみる

実は私(回答者)がこうした質問をいただいた場合、結果的にその半数以上のケースにおいて、本業の見直しから始めることをお薦めしています。つまり本業に立て直す余地が大いにあることが多いのです。実際には本業の立て直しをやっただけでは不十分で、それに加えて新規事業などの何らかの新しい取り組みを続けるというパターンが最もオーソドックスですね。

しかしこの質問者のケースではその典型的なケースには当てはまらない可能性が高そうです。あくまで想像ですが、本業の『ホテルの清掃事業』の対象顧客はごく普通のホテルであり、このコロナ禍で利用客が激減したせいで質問者の会社に依頼する定期清掃の頻度や程度をかなり減らしているのだと思います。

この『ホテルの清掃事業』という本業は顧客市場が(一時的とはいえ)崩壊状態にあるため、経費削減やクロスセルなど通常の本業改善の手段はあまり有効ではありませんし、国内外での状況を考えると、新規客(=ホテル)の開拓も現実的ではないでしょう(多分、質問者のほうでも既にそうした検討は行った上での質問だと思います)。

つまり、本業の業績回復のために打てる有効な手は現実的になく、顧客のホテル業界の回復を待つしかないという「神頼み」状態だというのが実情だと考えられます。

ここまでくると、私が何を言いたいのか、ある程度の見当がつく人が多いのではないでしょうか。そう、2つの選択肢のうち片方はほとんど無意味なのです。それを論証するため、続けて私が問いかけているのが、次の文です。

そこでまず考えるべきは、前者の選択肢が依って立つ前提は何で、それは妥当なのかを検討することです。「既存の『ホテルの清掃事業』に留まって顧客のホテル業界の回復を待つべきか」という選択肢が有効であるための前提は、・・・

(以下、記事に続く。無料会員の登録をしてあげてください)