The Ownerという経営者向けウェブメディアの『経営者のお悩み相談所』というコーナーにて執筆していますが、今回はその第9回(私にとっては4つ目)の記事をご紹介します。題して『会社を拡大していく中での中途入社社員への文化浸透のための方策は?』です。今回の経営者からの質問は『会社を拡大していく中で中途入社社員への文化浸透に苦戦しています。なにか特別な施策、もしくは採用の際に重視すべき部分や必ずする質問はありますか?』というものです。
(ここから記事の中身です)
中小企業の成長のため中途採用はほぼ不可欠。では中途採用者に対し自社の企業文化をどう浸透させていくのか。難しいイシューですが、基本は極めてオーソドックスです。まず企業文化とは何かを理解した上で、自社にとってその中核となるべきは具体的にどういうものかを明確にしてから、制約を意識しながら現実的な対処法を考えるということです。
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企業文化というものを理解する
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まず、企業文化とはどういうことかと改めて考えてみましょう。抽象的な概念なので色々な定義があり得ますが、端的に言えば「企業構成員の間で共有されている価値観(特に規範・信念など)、そしてそれらが反映される行動・思考様式のこと」を指します。要は、「何か問題や仕事テーマが発生したときに、その組織のメンバーは通常どういうスタンスでそれに取り組むのか」のパターンが企業文化だと言っていいでしょう。
その意味で企業文化というのはかなり幅広い要素を含み、しかも客観的には定義しづらい、非常に曖昧なものなのです。とはいえ、それぞれの会社の企業文化とか「カラー」とか言われるものは間違いなくあります。特に我々コンサルタントのように色々な会社に関わる職種の人間にはそれを感じる機会が少なくありません。同じ業界でありながら、会社Aは何でも慎重に事に当たる文化を持っているのに、会社Bはとりあえずやってみてから次にどうするか考えるという文化を持っている、なんてことはよくあります。
問題は、この企業文化というものは内部にいる人には(当たり前過ぎて)客観視できないのです。むしろ社外の人のほうがよく見えるものです。ちょうど自分の口臭は分からないけど、人の口臭には敏感になるようなものです。それでも他社の人から「お宅は××の傾向がありますね」と何度も指摘されると、それが自社の企業文化の一面だということには気づくものです。
でもそんなふうに外部からよく指摘されるようなものは一面に過ぎず、自社の企業文化のすべてではあり得ません。企業文化というものは多面的であると考えておくのが妥当でしょう。そして企業文化にはポジティブな面とネガティブな面の両方があることも(人間の性格と同様)、実感として理解できますよね。
企業文化は一旦根付くと頑固なほどに引き継がれていくと一般には見なされますが、歴史がある大企業でも企業文化が変化することが意外とあるものです。大概は業界環境が大きく変わったり衝撃的な事件・事故に遭遇したりして(または引き起こして)、存続への危機感から「変わらざるを得なくなった」というケースが多いのですが…。
でも中小企業が大企業に成長する過程では、大抵のケースで企業文化はある程度変わってしまうものなのです。それは社員が増えることで創業者の個性に紐づけられていた価値観が薄まることと、大きな会社になると「寄らば大樹の陰」とばかり安定志向の入社者が増えること、の2つが大きく関係していると思われます。
質問者はこの傾向を心配されており、少しでも創業時の価値観や行動規範を維持したいという思いなのでしょう。
(以下、記事に続く)