「マスクで安心」は大きな勘違い

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コロナ感染が急拡大する中、多くの「感染経路不明」の感染者が発生しています。問題は、それらのうちの少なくない人たちが、聞き取り調査の担当者に対し、同様のコメントを発していることです。

曰く、「感染経路に心当たりはない。出掛けた際には常にマスクをするなどずっと気を付けていたのに不思議だ」と。報道されていた30代のマッサージ店勤務の男性も、40代の経営コンサル会社の経営者も、50代のサラリーマンも、ほぼ同様の趣旨を話しています。

ポイントは、後半の「マスクをする」ことで感染防止策になると彼らが信じていることですが、これは大きな勘違いなのです。

以前にも当ブログで指摘しましたが、実は通常のマスクでは、周囲の人からの飛沫感染もマイクロ飛沫感染も防げません(一方、医療用マスクには防止効果があります)。ウイルスの大きさ<マスクの網目の大きさなので、当然です。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68435

相対して会話する人からの飛沫感染を防ぎたいのなら、フェイスシールドを使用すべきです(営業時にこんな格好をしている人はいませんが)。

https://www.asahi.com/articles/ASN4K5JT5N4KUTIL01N.html

通常のマスクに感染防止の意味があるとしたら、感染した可能性のある手で無意識に自分の口や鼻を触ることでウイルスに感染するリスクを減らせることです(観察していると分かることですが、人間は無意識に何度も自分の口や鼻を触るものです)。

ただしマスクをし慣れていない人は、気になるため何度もマスクの位置を調整するため、表面も裏面もついつい手で触ってしまいます。すると鼻や口があたる部分に自分からウイルスをなすりつけることになりがちです(紐を触って調整する分には問題ありません)。気をつけてください。

するとマスクはまったく無用の長物かというと、そうでもありません。感染した可能性がある人が他人にうつす可能性を小さくしてくれます。咳やくしゃみはもちろん、普通の会話でさえ、人は口から多少は飛沫を飛ばしています。でも正しくマスクをしていれば、その際の飛沫の大半は自分がしているマスクの内側に止まります。他人に害を及ぼす恐れは小さくなります。

つまりマスクの着用というのは「他人からうつされないため」ではなく「他人にうつさないため」に役立つのです。ちょうど咳エチケットみたいなものですね。

だからこそ中国の多くの町ではマスクをせずに外出していた人が袋叩きに遭うケースが続出したのです(さすが自分を守るためには相手を先制攻撃することも躊躇しない民族です)。欧米の知識人が当初、マスクを薦めなかった理由も分かりますね。彼らは個人主義の(=身勝手な)市民にマナーとしてのマスクの効用を説いても仕方ないと考えたのでしょう。

こう考えると、日本各地で「マスクが欲しい」「売り切れていて困る」という声が相変わらず強いのはどういうことでしょう。心優しい日本人としては、他人にうつすことを恐れて「マスクがないと困る」と訴えているのでしょうか。多分、そうではないですよね。

最初に触れたように、大半の人は「マスクは自己防御策」だと考えているようです。経営コンサルティング会社を経営しているような、一般には知識人と思われている人でも勘違いしたままなのです。

ではなぜ政府や感染症対策本部の人たちはこの勘違いを指摘し、「マスクよりも手洗いを」と声高に訴えないのでしょうか。実は政府も当初はそうした説明もしていました。でもマスク不足の言い訳にしか聞こえないと思ったのかも知れませんし、「じゃあマスクしないで出歩いてもいいや」と開き直る若者が増えるとマズいと考えたのかも知れません。

とにかく多くの人が外出時にはマスクをしていることで集団「咳エチケット」状態になっていることをよしとしているようです。手洗いしないで感染したら自業自得だと考えているのかも知れません。

かくて相変わらず(テレワークでなく)出勤を続けているような30~50代の男性たちは、「マスクさえしていればそう簡単には他人からうつされないぞ」と勘違いしたまま対面の会議を続けるのでしょう。そして外出から戻った際や食事前に手洗いすることは適当にしたまま、マスクをいじりながら今週も来週も勤務を続けるのでしょう。

列島の感染爆発はまだまだ止まりそうにありません。