最近、地方の中小製造業の経営者の人たちにヒアリングする機会が続けてあった。その中で気になったのが彼らの投資意欲の弱さだ。たまたまかも知れないが、働き盛りの年齢でありながら多くは現状維持志向なのだ。町興しプロジェクトに関わる人たちの元気さを近頃見ているだけに対照的に感じた。
決して現在の経済環境が悪い訳でもなく、景気の先行きを悲観的にみている訳でも、自社の競争力に関し弱気になっている訳でもなく、ただ漠然と将来への不安が拭えない様子だった。
言葉の端から窺うに、一つには超円高不況やリーマンショックの際に金融機関の「貸し剥がし」を見聞きしたことが大きなトラウマになっている模様だった。もう一つは普段から体感する、昔に比べての地方の活気のなさが大きく影響しているのだと思う。高度成長期の経営者のように「明日はきっと今日よりよくなる」と無邪気に信じることができない哀しさだ。
地域の金融機関が「優良な融資希望先が限られており、収益拡大の機会が見つからない」と嘆くのは分かるが、その責任の一端は自分たちにもあるということを忘れてはならないと思う。同時に、こうした地方の閉塞感を破るための仕掛けを考える責任は自治体や金融機関および我々民間企業だけにあるのではなく、政治家にも大いにあるはずだ。
日本は不合理な円高水準を長い間放置するなど、製造産業の維持にあまりにも無頓着かつ無責任な期間が長過ぎた。そのせいで韓国や中国などに仕事と雇用を随分奪われてしまったことは事実だ。
その意味で、(具体的な施策の半分以上は必ずしも賛成できないが)米国のトランプ大統領が自国の雇用を増やすことに躍起になっている姿勢は日本の政治家も見習うべきだと思いえる。