カジノ法案がもたらすものとその責任の行方

社会制度、インフラ、社会ライフ

「カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備を政府に促す「カジノ解禁法案」が2日午後、衆院内閣委員会で自民、日本維新の会などの賛成多数で可決された。民進などが反対するなか、自民が採決を強行した。党内で賛否が割れていた公明は午前の常任役員会で自主投票とした。自民は14日までの今国会での成立を目指しており、衆院を6日に通過させる方針だ」(引用:朝日デジタル)というのが現時点での情勢だ。どうやら自民党は本気でこの法案を通すつもりらしい。

様々な報道で指摘されているように、この法案はかなりの問題を含んだ筋の悪いものだが、たまたま国会延長で通せるめどが立ってしまったので、ほとんど議論なしに衆院の委員会で可決されてしまったといういわく付きの法案なのだ。与党の賛成派でさえ「議論がほとんど(6時間ほど)されていない。禍根を残しかねない」という運営のまずさだったようだ。

「統合型リゾートを推進する」という建前は立派なものだが、実態は「ぱっとしない地方の大型リゾート施設の目玉にギャンブル場を併設してあぶく銭を稼ぎ出そう」という貧しい発想の代物だ。

端的に言って、出張や観光で来日するインバウンド外人にカジノで損をさせて大金を落としてもらおうという意地汚い魂胆だ。決して日本らしい「思いやり」や「おもてなし」ではなく、外人に「旅の恥はかき捨て」をさせようという狙いだ。しかも実際には地元民が頻度高く一攫千金を狙って入り浸りになることも(陰ながら)覚悟の上としか考えようがない。

それで地元にもたらす「正の効果」はかなり怪しい(確かにある程度の雇用は見込まれるが、大部分のお金は海外および中央の大資本に吸い上げられるため、地元のCFはよくてもわずかなプラスに過ぎない可能性が高い)一方、「負の効果」はかなり確かだ。まず地元民がギャンブル中毒になりやすく、家庭崩壊や青少年の不良化の促進はいうに及ばず、へたをすると暴力団の資金源につながりかねない。よくて「あぶく銭目当ての一大歓楽街」を成立させることだろう。最悪は地域のコミュニティ崩壊につながる。

まともな政治家や企業家が率先すべき構想ではないが、なぜか自民・民進ともに賛成派が少なくない。よほどリゾート関連業界から政治資金を受け取っているのだろう。しかし(仮に経済的メリットが多少得られたとして)その社会的失敗のしりぬぐいはどうするつもりなのか、次の選挙で選挙民は厳しく問わなければならない。