フリーランスの女性クリエイター集団が生み出す新しい価値

ビジネスモデル

「働き方改革」とか「長時間労働をやめよう」というスローガンに加え、「女性が働きやすい環境」などという言い回しが最近目につく。女性にとって働きやすい職場が少ないことの裏返しなのだろう。そのために自ら起業する女性も少なくないと聞く。

その一つとして面白い集団の話を聞いた。その名をコトリスラボという。子連れで利用できる女性起業家のためのシェアオフィスだ。代表の寺田望さんが率いる集団で、ママデザイナーや女性料理人、カメラマン、翻訳家、各種士業など、様々なスキルを持った60名以上のフリーランスの女性クリエイターたちと地域企業を結んで仕事をこなしている。
http://www.bizhope2012.net/cotorislabo/

そのコトリスラボがテレビ東京の「ガイアの夜明け」で取り上げられていた。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview_20161101.html

番組では、創業52年の自動車部品の下請け工場から新たな依頼が舞い込んだところから始まった。3年前に父親からこの(株)三光ダイカスト工業所を受け継いだ三宅ゆかり社長が依頼者だ。主力商品であるアルミ製の自動車部品の売り上げは半減した同社は、下請けでなく、新たに消費者向けにオリジナル商品を作りたいというのだ。実際には簡単ではないが、世の中には最近こうした話が多いと聞く。

初顔合わせの席でコトリスラボのチームが提案したのは、驚きのアイデア。「スチームパンク」、株式会社三光ダイカスト工業所の職人たちは初めて聞く単語に戸惑いを隠せない。産業革命時代の古い機械をモチーフにしたSFの世界のことらしい(小生も知らなかった)。

どんなものかを見せてもらっても職人たちの戸惑いは増すばかり。しかし第二回のミーティングでメンバーの一人が描いてきたイラストが配られ、これまで捨てていたものや使わなくなった部品を組み合わせればアクセサリーができると提案された。これをじっと聞いていた萩野稔工場長はその気になったようだった。

しかし大番頭の今井輝雄取締役は大反対。幹部たちの集まる前に呼び出された寺田さん。一時間ほど話し合いを続けるが、説得には至らず。それでも10月に東京で開かれるスチームパンクのイベントに出展することは認めてもらった。そこでアクセサリーなどを試験的に販売しようというのだ。

イベントまでの準備は順調だったようだ。職人たちがイラストを見て触発されて、廃材で作ったアクセサリー。イベントの時に着るコスチューム。ママさんたちの評価は高かった。コトリスラボの他のメンバーもそれぞれの特技を生かし、PRビデオやオリジナルのロゴ、そしてホームページを作った。

10月8日、新宿歌舞伎町で今年5回目を迎えるスチームパンクのイベントが開かれ(来場者は2万人を超える日本最大のイベントらしい)、そこに三光ダイカスト工業所もブースを設けて職人が自ら作ったアクセサリーを販売。飛ぶように売れていた。

あんなに反対していた今井取締役も現場を観に来ており、合流した。その人気ぶりを見て、新事業にも納得したようだ。先行きが楽しみだ。