三菱自動車はさる10月20日、益子修会長兼社長がCEO/社長を続投することを発表した。益子氏は、月内に三菱自が日産から34%の出資を受け入れるのを機に退任する意向をかねてより表明しており、三菱自会長を兼任する日産のカルロス・ゴーン社長からの再三の慰留要請に対しても辞退を繰り返してきたが、それでもあきらめずに慰留を繰り返すゴーン氏に根負けしたようだ。
ゴーン氏ら筆頭株主となる日産幹部としては、軽自動車に関する業務提携および今回の資本提携の交渉の窓口としてずっと付き合ってきた益子氏に対する信頼であり、他の三菱自動車生え抜き幹部に対する不信感の裏返しだろう。
そして、たとえ日産のエース級を社長として落下傘的に派遣しても孤立してしまっては再建がうまく行かなくなると判断したのだろう(かってのゴーン氏ほどの強烈な再建屋がそうそういるわけではない)。ゴーン氏が20日のWBS(テレビ東京)の番組内で語った言葉を借りれば、「あくまで三菱自の社員が自分の問題として捉えて解決しなければいけない。そのための人事なのです」ということだ。
日産側としては合理的な判断というのは分かるが、さて三菱自の社内およびディーラーを含む利害関係者は素直に歓迎するのだろうか。
自らは近いうちに身を引くからと、様々な関係者に耐え忍ぶことを要請してきた経緯がある益子氏(実は三菱商事出身)が、結局はそのままCEOとして再建を主導することになったのだ。大半の社員をはじめ、前回も今回も不正に関与していないのに貧乏くじを引かされた人たちは、割り切れない思いを抱きながら今回の顛末を聞いたに違いない。
心ならずも前言撤回となった益子氏が、これから何度も訪れるであろう厳しい局面において本当にリーダーシップを発揮できるのか。疑問が膨らんできて仕方がない。