前から関心を持っている業界の一つに産廃処理業というのがある。一部にはかなりダーティーな連中もいたりする業界だが、最近はその「静脈産業」としての重要性が認識されてきて、大手企業グループも取り組み始めている。そんな中、業界に対する見方を変えさせる原動力になった有力企業の経営者が紹介された。
それが7月28日放送のカンブリア宮殿、石坂産業の社長、石坂典子(いしざか のりこ)氏だ。題して「産廃業からリサイクル企業へ大変身!~絶体絶命から会社を変えた2代目女社長の格闘記~」。
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/20160728.html
この会社のリサイクルへの取り組みは業界一といってよいもので、とにかくここのリサイクル率の高さ(95%減量化)には感心する。だから多少でも意識の高い関東の産業廃棄物排出事業者(主に建設業)は石原産業に産廃を持ち込むと聞いたことがある。
しかし今回の番組を観て、もう一つ大きな理由があることを知った。それは受付に若めの女性を何人も並べ、愛想がよいこと。しかもおしぼりなどのサービスまである。そのためトラック運転手が石原産業に向かうのだということだ。見事な商売人だ。
1999年に起きた「所沢ダイオキシン問題」で矢面に立った石原産業。そのとき創業者である父の思いを受け止めて、そして存亡の危機感に支えられて、石原新社長(当時30歳!)が繰り出した職場改革は徹底したものだった(これは以前、別の番組でも知った)。
持ち込んだ処理物が処理場からはみ出し溢れることを許さず、整理整頓や規律を口やかましく言う2代目の娘社長に反発したベテランがこぞって(社員の約半分?)退職したという。大変だったろうが、ある意味「血の入れ替え」が短期間でできたわけだ。これこそが不退転の決意というものだ。
それと平行して焼却処理から撤退、40億円かけて完全に屋根で密閉された(したがってほとんど埃を出さない)プラントを建設。廃棄物をリサイクルすることにこだわったビジネスへと転換した。これは当時、この業界では誰もが無謀だと考えた、しかしその後いくつかの大手企業が追従した最先端のやり方だ。先見の明とはこのことだ。
おかげで地元から「汚染源」と嫌われていた会社を、清潔で環境にやさしいリサイクル企業の代表へと変えたのだ。今では地元の人にも慕われ尊敬される企業になっている。こうしてみると、石原社長の執念というのはすごい。そしてその成果は「素晴らしい」の一言だ。