住宅リフォーム業界でも三方よしの関係が成り立つ秘訣を示す会社

ビジネスモデル

住宅機器販売店とメーカー、および工務店がその中核を占める住宅リフォーム業というのは摩訶不思議な業界だ。あまりに買手の立場を無視した儲け主義が横行しているだけでなく、詐欺師に限りなく近い胡散臭い連中がいまだに跋扈跳梁、いかにうまく手抜きするかで利益をねん出しようとする、ひどいやり方が横行している。

そんな中、小さくとも誠実かつユニークなやり方で地域の信頼を勝ち取っている企業が紹介され、ほっとした。それが6月23日に放送されたカンブリア宮殿だった。「家の補修や不具合を全力で解消!地元住民を幸せにする感動のリフォーム会社」と題して、横浜市栄区に本社を構え5店舗を展開するリフォーム会社「さくら住宅」がフィーチャされていた。

地元である横浜市栄区の桂台地区では、住民の5世帯に1世帯がさくら住宅を利用している。オープンキッチンに改装した家や、凝った玄関など、リフォームのパターンは多種多様。しかしどのお客も嬉しそうに、「さくら住宅さんのおかげ」と口にしていたことだけは共通している。自宅のリフォームはもちろん、親しい人に紹介するのも絶対にさくら住宅以外にあり得ないと断言していた。

番組で実際にさくら住宅の従業員に密着取材してその様子が放映されていたが、住民から受ける依頼は、蛍光灯の交換や、柵の補修など、どれも数千円規模で、採算が取れない小さな補修工事ばかり。確かに同業他社は「割に合わないから…」とやりたがらないことばかりだ。

しかしこうした小さな仕事の一つひとつに丁寧に対応することで、お客は「さくら住宅さんは信頼できる」「ここは儲け主義ではない」と感じ、いざ本格的なリフォームをするときには同社に頼むのだ。実に顧客の7割がリピーターで、18年連続で黒字経営を続けているという。

しかもさくら住宅の株主は、なんと65%が顧客。株主総会の中で「お小言をください」とリクエストするのだが、「社長の健康に気をつけてね」といった声が圧倒的。株主総会の後の懇親会はユーザー感謝会みたいなものだ。本社隣の無料貸しスペースは、近所に住むユーザーのコミュニティ集会所となっている。

他にない客との関係性を築けたのは、社長の二宮氏の歩みの賜物だ。かつて大手住宅メーカーに勤めていた二宮社長は、「家を売ったら終わり」という、当時の業界の考え方に疑問を持ち、50歳で独立。客が幸せになる会社を目指すことを決意したのだが、実績も特段の営業力もない小さな工務店には存続するだけで大変な苦労があったようだ。

あるとき、小さな補修工事をしてあげた主婦が本当に喜んでくれ、他のお客を紹介してくれたのだ。その喜びように、二宮社長自身も「これこそが自分が進むべき道だ」と考え、今のスタイルを確立するに至ったそうだ。

今や地域になくてはならない存在になっているさくら住宅。必然的に客はさくら住宅の価値を認め、その提示額を信用し、値引きを要求しない関係性が成り立っている。これも経営的に重要な要素だ。こうした関係ができると無駄な駆け引きや交渉がなくなり、しかもその信頼を壊したくないため、双方がよい緊張関係を維持する。

価格で勝負しないさくら住宅は、職人への待遇が業界の中でも手厚いため、腕のいい職人がさくら住宅を優先して仕事をしてくれる(というか、「さくら住宅さんの仕事しかやりたくないよ」と言っていた)。職人が給料に見合った(実際には、心意気に感じて工賃以上の)仕事をすることで、客も満足し、みんなが幸せになれる仕組みができている。素敵な構造だ。

業界はまったく違うが、ウチと同じ考え方の経営者がいて嬉しい。