AIの進化動向を垣間見た

ビジネスモデル

最近のプロジェクトの半分近くが、何らかの部分で人口知能(AI)の存在に影響されているか、もしくは人口知能をいかに効果的に使う/取り入れるかというものになっている。そのためAIの進化のテンポや方向性には常日頃関心を持たないではいられない。

5/15(日)と5/18(水)に放送されたNHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人口知能を探る」はまさにそのど真ん中を射るようなテーマだった。そして気づきも得ることができた。

将棋界最高の頭脳の持ち主といわれる羽生善治氏がレポータ役をやるというのも贅沢だが、個人的にも関心が強いことがよく伝わってきた。

AlphaGo(アルファ碁)に関するトピックは、世界最強棋士のイ・セドル九段が対戦前にあまりに自信過剰だったのが3連敗後にはすっかり自信喪失しているのが少々情けなかった。しかもやけくそ気味に打ったでたらめ手にAlphaGoが混乱して暴走したのには驚いた。ただ、だからといって「こんな暴走するようなAIを医療などのクリティカルな場面で使うのは危険過ぎないか」と訊ねた韓国人記者にはずっこけた(案の定、「まだ試作機です」と一刀両断されていた)。

Google傘下のディープマインド社の天才CEO、デミス・ハサビス(39)氏と羽生氏の対談がとても興味深いものだった。ディープランニング技術を深めていく過程、特に直感をAIにもたらそうという発想がユニークだ。さらに人間を超える創造性を得るために行ったのがAlphaGo同士で対局を繰り返すことだったというのが面白い。

後半の、シンガポールが既に社会システムの管理にAIを積極的に使っている様子が今回の番組で最も驚いた部分だ。都市交通システムの制御に使い始めたのは知っていたが、既に渋滞の解消に大きな効果をあげているとは大したものだ。

国内最大のDBS銀行で、職員の不正行為を未然に防ぐ人工知能を導入したというのが一番の驚きだ。収賄など不正な行為を画策しそうな職員をあぶり出す。24の項目があり、一人一人の取引の仕方、外部とのチャットの内容、メールの文面などを監視している。実際に不正行為を企てている職員を予測できる精度は90%だという。

同国政府は今後、国家の運営を次々と人工知能に委ねようとしている。そのために既に収集しているのが国民一人一人の行動データ(さすが中国以上の管理国家!)。交通機関の乗車履歴、スマートフォンからは個人の位置情報を1秒ごとに集めている。人間にストレスを与えず、かつ省エネも考えた交通ダイヤを人工知能が指示する。国営住宅にはセンサーが設置され、常日頃から住民の生活パターンを把握する。異変があればAIがすぐに気がつき、その緊急度まで判断、家族や救急隊に知らせるという。

「エネルギー供給、交通や医療の整備、犯罪の防止まで、人工知能に管理させることによって社会は飛躍的に効率化される」というスマート国家計画担当大臣ビビアン・バラクリシュナン氏の言葉に、なんとなく背筋が寒くなってしまった小生は旧世代なのだろうか。