テラモーターズ。電動バイクのメーカーである。日本発で世界展開を狙う元気のよいベンチャーとして小生は以前から注目している。
ガイアの夜明け(テレビ東京系)にも久しぶりに登場(9月1日放送)。題して『日本の技術で世界を救う!新ベンチャーの底力』と、アジアをターゲットに市場開拓を進めている様子がレポートされていた。
2010年にテラモーターズを創業した社長の徳重徹さん(45歳)は「環境やエネルギー問題を抱える発展途上国の方が、先進国よりも電動バイクの需要が高い」と、現在、アジアをターゲットに市場開拓を進めている意図を語った。その徳重さんからバングラデシュを任されたのが、桑原康史さん(27歳)と上田晃裕さん(29歳)。いずれもこのベンチャーの理念に賛同し、大手企業から転職してきた。
バングラデシュは天然ガスの生産国だが、地域によって少しずつ枯渇が始まっている。二人はある地方都市に目をつけていた。そこは貧困地域のため貴重な天然ガスが行き届かず、電動の三輪タクシーが生活に欠かせない交通手段となっていた。いわば、いずれ天然ガスが枯渇するバングラデシュの先行事例となっていたのだ。
その町に先行して溢れていたのは中国製の電動三輪タクシー。安物のため「バッテリーが半年で使い物にならなくなる」と、ドライバーからは不満が続出していた。バッテリーを頻繁に交換しなければならないため、出費がかさむというのだ。
実はテラモーターズの売りは充電器。バッテリーへの負担が少ないため、中国製に比べて寿命が1.5倍長いという。現地に合わせての車体設計で割安な生産体制をスタートさせた桑原さんたちは、市場での逆転劇への自信を深めていた。1号店のオープンの直前に、日本の技術を詰め込んだ品質の高さ(しかも値段は中国製とほぼ同じ!)をタクシードライバーたちにアピールすると、好感触だ。
しかし、そこには予期せぬトラブルが待っていた。何と、1号店には完成車がオープン前日までに一台も納入されていないのだ。二人が慌てて工場に駆け付けると、まだ完成した車は一台もない。バングラデシュ従業員が直前までさぼっていたのだ。前日寝られなかったので昼間寝ていたという呆れた言い訳だ。二人は従業員を叱咤し、徹夜で何とか2台を組み立て、1号店に持ち込んでオープンを迎えることができた。
いよいよバングラデシュ1号店のオープン日には、早速タクシードライバーたちが店に押しかけてきた。順調に商談が進み、注文が積み上がるが、追加の完成車は全然届かない。遠くから来た客など、今日中に引き取りたい客ばかり。イライラが募る客と焦る桑原さんと上田さん。
片方が至急、工場に様子を見に行くと、従業員はのんびりと組み立てており、まだ一台も完成していない。どうやら今日も重役出勤だったようだ。従業員の尻を叩きながら一台、もう一台と完成するそばから店にピストン輸送する。完全に泥縄式だが仕方ない。それでも店に到着した完成車は我先に客が引き取っていく。引き渡しの様子は少々殺気立っていたようだ。
どうやらテラモーターズの電動三輪タクシーは高品質で市場でも競争力があるようだ。購入したタクシードライバーたちはがんがん商売に励んでいる。テラモーターズのは1.5年間バッテリーが持ち、半年で元が取れると言っていたので、1年分まるまる稼ぎになるのだ。それが証明される頃、テラモーターズの評判は現地で揺るぎないものになっているだろう。
ただし、工場の従業員は入れ替えておいたほうがよさそうだ。