便利なはずの自動水栓が人々をイライラさせる

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世の中にある「折角なのに惜しい!」または「やらなきゃいいのに」というものを採り上げ、なぜそうなってしまうのか、改善法はあるのかを考えたい。そのトップバッターは、近頃たいていのビル・商業施設の洗面所に設置されている、センサー付きの自動水栓蛇口。

あの、手を差し出すと水が流れ、手を引っ込めると水が止まるタイプの蛇口。直前にどこの誰が触ったか分からない公衆の場ゆえ、ハンドルをひねることなく水が出てくるというのは、何とも有難い代物です。いかにも潔癖症の日本人が好みそうなモノであり、おしり洗浄機能付きの便器と並んで、「ハイテク・ニッポンの象徴」と称賛する外国人の声を何度か聞いたことがあります。発展途上国はもちろん、欧米先進国でもこれほどの普及はないようです(そもそも日本発の発明だったそうです)。

実は施設側が推進する最大の理由は節水です。ハンドルをひねる従来型ですと、水を出しっぱなしにする平均時間がどうしても長くなる上、ハンドルをひねり過ぎてすごい勢いで水を出したり(それで辺り一面を水浸しにすることもあります)、うっかり締め忘れたりする人がどうしてもいます。ビル・商業施設ではトイレ洗面所の使用人数が半端なく多いですから、それらの水の無駄使いが積もり積もってしまうとそのコストは無視できません。水道料金というものは意外と高いものですから、自動水栓への取替コストと作動のための電気代を考えても、節水メリットのほうが大きいと判断されるようです。

こうしたメリットの大きい自動水栓蛇口ですが、あくまで「きちんと動けば」の話です。手を差し出しても位置が悪いのか、水がなかなか出てこない、なんてのは日常茶飯事です。手を差し出しても水が出ないのに引っ込めるタイミングで出てくる、逆に勢いよく出過ぎて袖口を濡らしてしまった、といったことでイライラした経験を多くの人が持っているかと思います。

石鹸水をつけて手を洗っている最中にセンサーが反応して水が飛び出し、これじゃ全然節水にならないぞ、と思うこともありますね。洗面所でお化粧直しをする女性には、変なタイミングで水が飛び出してきて服を濡らされた経験がある人も少なくないようです(想像するに、鏡に顔を近づけるタイミングで体の一部にセンサーが反応し、水が飛び出すのでしょう。これは別の問題です)。

これらは(最後の例を除いて)、人体検知センサーの検知範囲や水量の設定の問題です。後者は施工時の設定がいい加減な場合が多いようですが、前者は長い間使用しているうちに汚れ・傷などの要因によりセンサーの受光量が変わってしまうことが主な理由のようです。つまりある程度の経年変化は仕方ないのでしょう。すると問題の本質は、定期メンテナンス時に調整がされないことです。まったく水が出ないなら修理されるのでしょうが、とにかく水が出るなら問題ない、と施設管理側が見逃してしまうわけです。残念なことに、メーカーや施工業者がこうした問題点を気に掛けているといった話は聞いたことがありません。

でもその結果は、先に挙げたようなユーザーの小さな不満が蓄積することと、主な目的たる節水が中途半端になってしまうことです。特に、せっかく多くの人に便利さを体験してもらって自らの技術力をアピールできるはずの水廻り機器メーカーからすると、「なんだこのメーカーの製品は役立たずだな」と人々に思われかねません。自宅で水廻りの製品を買い替える際にそうした評価が頭をよぎらない保証はありません。(服を濡らされたなどの)場合によっては小さな恨みさえ買いかねず、ネットで悪評を流す「自称ユーザー」も現れてくるでしょう。

そんな理不尽な、と思われるかも知れませんが、消費者のメーカー選考基準なんて個人的体験が一番強いものです。そうした思わぬ低評価や理不尽な中傷を避けるためには、メーカーや施工業者から施設管理者に働き掛けて設定が狂っていないか積極的にチェックしてもらうことと、より簡単にセンサーやバルブの設定調整ができるように製品改良を進めることです。せっかくの「ハイテク・ニッポンの象徴」ですから、よりユーザー満足度が上がるようにして欲しいものですね。