孫正義氏らが目指す、ニッポン・ロボット産業の未来

ビジネスモデル

7月31日 に放送されたカンブリア宮殿は400回スペシャルの「日本を爆発させる“大ボラのススメ”」。ゲストはソフトバンクの孫正義社長と大阪大学大学院教授の石黒浩(いしぐろ ひろし)氏でした。

ソフトバンク創業時にアルバイト従業員に対し「売上を豆腐のように(○兆と)数えるようになる」と宣言したことに始まり、誰もが信じなかった目標を「大ボラ」という形で世間に対し表明し、次々に実現してきた孫社長。その大ボラの数々が「何故、実現できたのか」を検証してくれました。

覚えているだけでも日本テレコムの買収、ヤフーBBでのブロードバンド参入、といった思い切った手を次々に打って通信業界でのし上がってきたソフトバンク。2006年、孫氏は大勝負に打って出ました。日本企業としては企業買収の最高額、実に2兆円近い金額でボーダフォン・ジャパンを買収、携帯ビジネスに参入しました。巨額の借り入れや、競合するドコモやauの寡占状況を見れば、誰の目にも無謀すぎる挑戦にしか見えなかったはずです。

このときからですね、まず大ボラを吹くようになったのは。「ドコモを超える」「利益を豆腐のように(1丁2丁=1兆2兆、と)数えるようになる」などの言葉を連発し続けました。あれから8年、日本経済が右往左往する中、孫氏のソフトバンクはプラチナバンドを獲得、「つながりやすさNo.1」をアピールするまでになり、なぜか太陽光事業への参入まで果たしました。

そして本業では遂にドコモの背を捉えたかと思いきや、アメリカの携帯電話第3位のスプリント社を買収。一挙にドコモを超え、営業利益は1兆円を突破しました。今や「トヨタを超える」とまで言い、既に世界へと駒を進めています。その快進撃は「夢を次々と実現する男」です。

番組では、なぜ孫氏の大ボラは実現するのか、大ボラを吹く本当の意味とは何なのか、を村上龍と小池栄子が本人に直撃してくれました。孫氏によると、大ボラを吹くのは「自分達を追い込む」ためであり、社員が知恵を絞り社長の大ボラを実現しようと必死になってくれるからだといいます。

でも大半の会社では1~2度はそんなことも「乾坤一擲」で起きるかも知れませんが、こう何度もやっていると社員は消耗し切ってしまうか、「いい加減にしてくれ」と逃げ出すかも知れません。無茶苦茶に有能でアグレッシブな社員を駆り立て、うまくその気にならせる、「猛獣使い」の才能が孫氏にあるのだと思います。

番組の後半では孫正義氏の最新のホラ話の話題です。6月5日に披瀝された、自立式コミュニケーションロボット「pepper」です。本体価格は19万8000円(税抜)。情報通信、エネルギーの次に孫正義氏が取り組む新分野です。

この電撃的なロボット発売の裏には、世界にロボット産業を奪われまいという孫氏の危機感があるといいます。そう、業界で話題となっているグーグルの動きです。ロボットベンチャーを次々と買収し、遂には世界で注目されていた東大のロボットベンチャー「シャフト」まで傘下に収めました。

番組の取材班は「pepper」の開発をソフトバンクと共同で手がけたフランスのロボット企業・アルデバラン社にも潜入。またソフトバンク社の開発現場から、「pepper」の人口知能開発が進行中の様子も見せてくれました。それを観ているうちに思ったのは、孫氏が語るように、「30年以内に1家に1台のロボット」の時代が本当に来るかもという感想でした。

「ジェミノイド」という人間にそっくりな「分身ロボット」で有名なロボット研究者・石黒浩氏もスタジオに現れ、「ジェミノイド」を囲んで孫氏らとロボット産業の未来を語りました。「ジェミノイド」は人口知能ではなく、人間が遠隔操作するものなので、ロボットとしては「pepper」とは全く異なる領域の製品ですが、見た目があまりに人間っぽいので、これに「pepper」の人口知能が組み合わされると、人造人間のプロトタイプもできそうです。

介護などの世界でロボットが使われつつある様子も競争の激しいロボット産業ですが、彼らのような人材がいる限り、日本のロボットロボット産業は世界トップを走り続けるのではと期待できます。