農業も介護もロボットの最大課題はコスト

ビジネスモデル

6月16日放送のワールドビジネスサテライト(TV東京系)では、特集 検証・アベノミクス成長戦略(3)として、農業分野でのロボットの活用への期待が取り上げられていました。題して「売れる農業ロボット作れ 無人でイチゴ収穫」。

愛媛県の松山市のイチゴ農家ではイチゴ収穫ロボットが活躍しています。人に代わって熟したイチゴだけを検出して自動で収穫するロボットが開発され、今、無償での実証実験中なのです。機能的には満足ですが、導入価格は1000m3あたり3500万円と随分高価なのがハードルとなりそうです。自己資金での導入は難しいと農家の渡辺茂さんは語っていましたが、当然でしょう。

開発したシブヤ精機の岡崎剛政専務は「農家にとって元が取れる価格を把握しきれていない」と述べていました。イチゴ収穫ロボットは国から開発費が投じられていますが、事業を担当した農研機構 生研センターも実用化の難しさに直面しているようです。はっきり言ってマーケティングセンス・ゼロですね。

和歌山県有田郡ではパワーアシストロボットの実験がされています。これを開発したのは和歌山大学の八木栄一特任教授。重いものを沢山持つみかん農家の助けになるロボット作りに取り組んでいます。八木栄一特任教授は「コストダウンして1台当たり100万円で売りだそうとしている。販売目標は100台」と語っていました。専用部品ではなく汎用的な部品を使うことでコストダウンを目指しているようです。

でも協力してくれている農家に尋ねると、「50万円を切らないと農家は買えない」と断言していました。確かにそうでしょう。差額の50万円ほどをどう埋めるか、さらなるコストダウンの道筋があるか(台数が出る家電製品との部品共通化しかないと思います)、自治体の補助金が使えないか、などあらゆる手立てを講じないと、難しそうです。これは役人、大学教授の手に負えるタスクじゃないと、残念ながら思えます。色々な伝手をもつ大企業の企画部門の人間か、製品開発分野に強いコンサルタントが真剣に取り組まないと実現は難しいでしょう。

6月18日放送の首都圏ネットワーク(NHK総合)で放送されていたのが、国家戦略特区での川崎市の動きでした。ロボットスーツを開発した企業と協定を結んだのです。ロボットスーツ「HAL」を製造・販売しているCYBERDYNEの山海嘉之社長と、川崎市の福田市長が調印式に出席しました。今後、ロボットスーツを介護施設や医療機関に導入し、実証実験を行うことになります。

同社は筑波大学発のベンチャーで、HALは同大学大学院教授も務める山海嘉之社長が、20年以上にわたり続けてきた基礎研究をもとに開発したものです。足が不自由な人が一定期間装着して治療を行うと、脳・神経・筋系の機能再生が促進され、歩行機能が改善されるというのがウリです。昨年にはついに欧州で医療機器の認証を取得し、世界で初めての「治療ができるロボット」となっています。

同じ神奈川県藤沢市の介護施設ではロボットスーツを生活に取り入れる取り組みを行っているのですが、ロボットスーツは医療機器とは認められていないため、高額な費用がかかるというのが実情です。そこで、川崎市では実証実験で効果・安全性を検証し、ロボットスーツ普及のために医療機器認定などを求めていく方針なのです。こうした公共側の思い切った取り組みにより、人手不足が明らかな介護分野でロボットスーツが普及すればいいですね。