親類に「経営者」がいます。その会社は一種のインフラサービス業です。非上場なので世間的には決して有名ではないのですが、地元ではそれなりに知られていて、社会インフラとして、また雇用面でも少なからず貢献をしています。業種がら、決して高収益ではないですが、「失われた20年」の間も増収増益を続けてきており、「隠れた優良企業」といってもおかしくありません。
そんな会社の実質的トップ経営者ですから(一応、最大株主、つまり親会社から「天下り」したお飾りの社長はいますが)、親類の中でも名士として扱われています。しかし子どものころからその「外面のよい」性格をこれでもかというほど知っている小生としては、手放しでそのまま受け容れるほどお人よしではあり得ません。どこかに警戒する心証を持っていることは否定できません。
そんな人と久し振りに会って、アルコールも介在させてですが色々と話をしました。話は多岐に亙っていましたが、「実はフループ会社の色んな人たちから直接担当でないことも相談される」と彼はあたかも迷惑そうに話し始めました。話題はグループの1つである公共的サービス会社です。その顧客サービス部門ではないバックオフィス部門の人が髭を生やしていることに対し相談者は快く思っていないようで、「どう思われます?」と尋ねられたということです。いわく「顧客には全く見えないとはいえ、最前線部門であれば髭禁止になっているのだから、全社員同じ扱いにすべきでしょうね」とアドバイスした、とのことでした。
これ結局、ホントの話かどうか、怪しいなと思いました。多分、小生が客商売でありながら髭を生やしていることに批判的なその親戚「経営者」が、説話の形をとって間接的に、小生の髭を批判したのかも知れないと感じました。面倒くさい話ですが、直接的に伝えるとカドが立つと考えたのでしょうね。こういうことは皆無ではありませんし、田舎の人ですから何でも保守的なのです(日本も戦前は成人男性で髭を生やすのはごく普通だったのですが)。
端的には「お節介」に過ぎず、しかも実情を何も分かっていない上での批判(当人は「助言」的な気分でしょうが)なので実に厄介なのです。当人はそれなりに年齢もいっているので、自分の意見は世間の代表的な意見であり、十分客観的だという意識が強いのですね。そこでこちらも、あからさまに否定したり、「余計なお世話」などと拒否したりすることはしません。「へーそうなんだ」とかいいながら話をはぐらかそうとしました。
すると同席していた奥さんが「どうでもいいんと違うの?会社のルールで髭禁止とか規定されとんの?」などと、かなり的確な突っ込みを入れました。その「経営者」はちょっと意外なところから反撃が来たので戸惑ったようですが、「いや、全社員が平等でないといかん。同じ仕事に対し同じ扱いをせんと」と言い出す始末。すかさず奥さん、「同じ仕事じゃないんでしょ?同じ会社だからと全部同じ格好せいってこと?あんたの会社もそうなの?」と厳しい。
段々旗色が悪くなった「経営者」は、何と「お客さんの前に出んといっても、髭なんか生やして格好ええなと思われとるのがおったら、社内でしめしがつかん」と言い出しました。「それって中学生の時にあったけど、みんな坊主って言われているのに一部の特待生が長髪なのはけしからんということ?」と、小生が思わず訊いたら、即座に「そうや」との返事でした。あぁ、何と低次元…。大人になっても、この個人的意見を客観的なものと信じ込んで人に押し付けようとする性格はやっぱり変わらないなぁと、強く感じました。情けない。