命を脅かす模造品がはびこる現代、その責任は誰に?

グローバル

11月13日(水)に再放送(最初の放送は7月9日)された「BS世界のドキュメンタリー」、シリーズ 値段の真実「模倣品社会~命を脅かすコピー商品~」(原題はCOUNTERFEIT CULTURE)。製作はTell Tale Productions(カナダ 2013年)。とても深刻な真実が含まれていた。

かつてコピー商品と言えば高級ブランド品のバッグや時計が主流だったが、今や食品、医薬品、電化製品、マイクロチップなど、あらゆる物のコピー商品が作られている。そしてその中には、人命に関わるものが数多くあるというのがこの番組のテーマである。北米、アジア、ヨーロッパ各地を巡り、違法コピーの取締りに奮闘するエージェントや製造・販売の現場を取材。かつてない規模で取り引きされるコピー商品がはらむ危険性を検証した番組である。

過去25年間で急成長を遂げた模倣品ビジネス。現在その規模は7千億ドル、世界貿易の1割を占めるという(世界のコピー商品の3/4は中国産だという)。模倣品氾濫の影には、強制的な労働、低賃金、労働者の健康への被害といった問題が潜んでいる。そして、私たちの命を脅かしかねない粗悪なコピー商品(模造品といったほうが適切か)もある。

たとえば、中国では偽造医薬品によって毎年何万もの命が失われているという。また、2000年に100名以上の死者を出したコンコルドの墜落事故は、別の飛行機のコピー部品が外れて滑走路に落ちていたことが原因だった。米国の航空産業特有の事情もあるが、定期的なメンテの際、耐久期限が切れた商品を交換する際に紛れ込んだりするのだ。なんと大統領が使うヘリコプターにも、軍用機にもコピー商品が入っていたという。

以前、NHKのドラマ「七つの会議」で、電機メーカーの子会社である部品メーカーのエリート担当者が、悪質な取引先と組んで規格より強度を下げたネジを納入させてコストを下げた結果、そのネジが航空機に使われており、大事故につながりかねないことが判明するが、会社ぐるみで隠蔽しようとする話があった。それを思い出した。

そのほか、事故の危険性が高まる自動車のブレーキパッドや有害物質を含むおもちゃなど、模倣品の危険は私たちの日常に入り込んでいることが指摘されていた。例えば薬は、効かないだけでなく毒物が混ざっているものなどもあり、それが原因で毎年多数の死者が出ている。番組で紹介されていた統計によると、パナマで300人、インドで100人、中国では何と毎年30万人がこういう薬で命を落としているという。こういう薬はネット通販で簡単に入手できるため、中国製「やせ薬」などが日本でも流通しやすくなっている。

違法コピーの取締りを行うエージェントは奮闘しているし、実績は上がっているが、所詮はいたちごっこ。違法コピー商品の製造者は加速度的に増えているという。なぜなら着実に儲かるビジネスだからである。仮に摘発され没収されようと、元々の原価は高が知れている。それに対し売れた時の利益率は笑いが止まらない位、いいはずだ。しかも中国をはじめとする途上国では、犯罪として摘発され刑務所送りになる可能性も低く、製造会社に対する罰金も懲罰的でなく、痛くもかゆくもない。

一方、上記で見るように、その粗悪コピー品がもたらす被害の範囲や深刻度はどんどん加速している。コピー製造で儲けている連中はその被害の実態を考えようともしない。所詮は犯罪者集団なのだから、詐欺犯が被害者のことを気に掛けないのと同じである。彼らは自分達が儲かればいいのであるから、その良心を期待することはできない。

値段ばかり追求する風潮とコスト削減至上主義が模倣品をはびこらせているのは間違いない。番組の中では「需要がある限り模倣品はなくならない」というコメントをジャーナリストが言っていたが、その通り。一番の対策は「模倣品は買わないこと」だ。