バングラディシュにおけるユニクロチームの奮闘

グローバル

11月17日(日)放送のNHKスペシャルは「成長か、死か~ユニクロ 40億人市場への賭け~」と題して、ユニクロのバングラディシュ出店戦略に密着。熾烈なグローバル競争の中、新たなマーケットを切り開く奮闘ぶりを追った。

年間150店舗という驚異的なペースで海外出店を続けているユニクロ(ファーストリテイリング=FR)。グローバル展開を急ぐ背景には、世界で激化するファストファッション競争がある。日本ではトップのFRも、ZARA(スペイン)やH&M(スウェーデン)といったライバルの後塵を拝し、現在は世界4位に過ぎない。

同じことをしても追いつけないと考える柳井社長は、新たな手に打って出た。それが世界最貧国、バングラディシュ市場への競合他社に先駆けての進出。今年7月に店をオープンさせ、Tシャツ一枚230円という破格の安さで勝負に出た。同国でビジネスを成功させることができれば、アフリカなど世界中どこでも商売ができる、と語る柳井社長。「2020年に世界4,000店舗、売上高5兆円」という目標を掲げ、世界ナンバーワンを目指し社員を叱咤する。

バングラディシュ進出を前に地元グラミン銀行と提携した。日本からは山口さんたち5人の精鋭が送り込まれたが、店員は全員バングラディシュ人を採用、日本人担当者が2か月かけてマニュアルを教え込んだ。ハンガーが大きすぎるなど、想定外なことが続く。成功の鍵を握るのは新たな協力縫製工場の開拓。社員が「ソフト&ストレッチ」の工場を訪れて打ち合わせていたが、慣れない生地のせいで作業が遅れ、オープンまでに間に合わない可能性さえあった。

首都ダッカで1号店、2号店と出店するが、出だしでつまずく。破格の安さを実現した「ソフト&ストレッチ」はぎりぎり間に合い、多くの関心をひいたが、1号店では全体の売上が目標を上回った中、比較的高かった「ソフト&ストレッチ」の売上は期待したほど伸びなかった。1号店は開店当初はともかく、その後は伸び悩む。

住宅街に出店した2号店はさらに悪い。とりわけ女性客が来ない。それに対し米系MBA出身女性が創業した女性向け地元ブランド「アーロン」は繁盛している。丁寧な刺繍を施した民族衣装は1点もので、高価格にもかかわらず売れている。タマラ・アベッド社長は、この国ではターゲットにしている客層に合わせることが重要だと指摘した。その後アーロンは、民族衣装をカジュアルテイストにアレンジし、大人気となった。

関係者の伝手で実際の生活者のお宅に入り込んで調べてみると、外出時に女性はカジュアルを着ない。そもそも持ってもいない。通常の街頭インタビューでの結果だけで進出を決めたようだが、粗っぽ過ぎたのではないか。

結局、彼の地のユニクロは売上が回復しないまま、テレビ会議で柳井社長に対し山口さんは不振の女性服について報告。それに対し柳井社長は、女性服だけの専門店や、さらには今の生活習慣で着られる服(=民族衣装)などを検討するように指示を出した。

ユニクロ1号店では、ラマダン商戦の終盤、店に若い女性客が目立つようになった。最終日には、1号店で売り上げ目標を達成した。しかし、地元店長が引っ張り切れない2号店は目標を2~3割下回った。準備不足や戦略性の欠如などを指摘することは容易い。しかしきっと彼らは盛り返すだろう。この会社の「精鋭」たちの能力の高さは折り紙つきだから。

新卒社員の3年内離職率は実に5割にも及ぶユニクロ。ブラックと呼ばれようが全く意に介さず、「泳げない者は沈め」「成長か死か!」とひたすら事業拡大追求の道を歩む柳井社長。この程度の足踏みは気にする様子はない。体育会系的体質が、いい意味でも悪い意味でも同社のここまでの躍進と幾多の挫折をもたらしたのであり、改めてそれがよく分かった。