5月3日(日)に放送されたドキュメンタリーWAVE(NHK)は「“サイバー戦争”に立ち向かう ~世界が注目するエストニア~」。まさに「世界の今を見つめる」という番組のコンセプトらしい内容でした。
4月8日、世界200以上の国と地域にフランス語の番組を放送しているTV5モンドがサイバー攻撃による放送を中断させられました。TV5モンド・イーブビゴ社長は「部下からの一報でイスラム過激派のロゴがスマートフォンに送られてきた」と当時の様子をコメントしていました。局内のネットワークは厳重に保護されているはずでしたが、何者かがネットワークに侵入しているとしか考えられず、被害を食い止めるには物理的に切断するしかなかったのです。
同時にハッキングされたウェブサイトの犯行メッセージから、イスラム過激派組織ISに関係する組織の犯行とみられています(フランスはISが敵国視している国の一つです)。この事態は、世界がサイバー空間での激しい戦いの時代に突入していることを改めて浮き彫りにしたのです。
ではまず、フランスでおきたサイバー攻撃はいかなるものだったのでしょうか。社内の大半のシステムが被害に遭った為、現在もインターネットのアクセスはできないそうです。国立情報システムセキュリティー庁(ANSSI)は事件勃発直後から調査しています。
サイバー攻撃のひとつが、大量にアクセスを仕掛けてサーバーをダウンさせる分散型攻撃です。これに対し、対策も進んでいます。まず、通信量の変化を見ることで兆候をつかむと同時に、どの国からアクセスしているのかもリアルタイムで表示されます。ただしそれらを食い止める決定的な方法は確立していないのが現実です。
サイバー戦争にどう立ち向かうのか、その最前線にあるのが、バルト海に面した小国エストニアです。IT立国としても有名ですが、(元の宗主国・ロシアとの紛争ぼっ発直前までいった)2007年に何者かが同国の銀行のネットワークを攻撃し、システムをダウンさせたことをきっかけに、サイバー戦争に世界でもいち早く直面したのです。
その経験を活かすべく、NATOがサイバー防衛研究拠点を首都タリンに設置。それ以来、サイバー攻撃に関する防御システム研究の最前線となっているのです。エストニアの“サイバー防衛企業”には各国の政府や軍、企業の危機管理担当者が日参し、サイバー戦争への対応策を急いでいます。
番組では、コロンビア軍の兵士がエストニアの“サイバー防衛企業”にて研修を受ける様子が描かれていました。サイバー戦争の演習として、サーバーへの攻撃・ファイアーウォール内への侵入を食い止めるため、2時間の攻防の中であの手この手を駆使するのです。
エストニアの国立・タリン工科大学にはサイバー・セキュリティー専門の学科があるそうです。その講義の様子も放送されていましたが、ログを見ただけである程度判断できるようになるそうで、実に実務的です。
さらにそのログ解析のための画期的ツール(KSI Appliance社製guardtime)も同国で開発されており、サイバー攻撃対策に期待されています。Industrial Block-Chainという技術を使っているそうで、すべてのデータファイルにタグを付けて、その動きを管理しトレースできるようにする仕組みです。データ量は少し増えますが、確かに有効そうです。実に面白い。