(以下、コラム記事を転載しています) ****************************************************************************
都内で電動キックボードが普及するにつれ違反・事故も激増し、高齢者や子どもにとって歩道が極めて危険な場所になりつつある。普及を最優先にして一番大事なはずの安全を軽視した当然の結果だが、このまま行けば「廃止」の2文字が浮かんでくる。
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電動キックボードの日本での導入から約4年。23年7月に施行された改正道路交通法での「特定小型原動機付自転車に関する規定」の施行後1年間の関連交通事故件数・死傷者数の内訳が、先日警察庁から発表された。
それによると検挙件数は2万5156件、交通事故は219件。市場導入が始まった22年における事故件数と比べると5.3倍にも膨れ上がる。要は、普及し始めた途端に違反・事故も激増しているということだ。
悪質な違反や事故も目立つ。24年1〜6月の交通事故のうち、飲酒運転は全体の17%にものぼる。自転車や原付きバイクの飲酒運転中の交通事故の割合が1%である事実と比べると、この高さは異常だ。
表に現れる数字がこれほど高いとなると、実態はその数倍。よほど「意識低い系」のユーザーが中核になっているのではと疑わざるを得ない。
NHKの「クローズアップ現代」ではその無法ぶりが暴露されていた。列挙すると、
- 公道で危険な運転をしている電動キックボードを見た人38%
- 実際に接触された、またはされそうになった経験がある人14%
- 2024年の交通違反の検挙件数4万5536件
- 通行区分違反が58%(ルールを守らずに走行するケースが目立つ)
- 飲酒運転での事故割合が17.2%と高く、社会問題になっている
とまぁ予想通りではあるが、交通ルール無視が横行しているのが分かる。
事情は2023年の道路交通法改正によって大きく変わった。それ以前は、電動キックボードは「原動機付自転車(原付)」に分類され、運転には免許が必要だった。
しかし新しい規定では「特定小型原動機付自転車」というカテゴリーが新設され、次のようなルールに変わった。
- 免許は不要(16歳以上であれば誰でも利用可能)
- ヘルメットの着用は努力義務(強制ではない)
- 歩道の走行は制限付きで許可(時速6km以下なら走行OK)
- 最高速度は時速20km(通常の道路での走行)
この改正(改悪?)により、利用のハードルはずっと下がった一方で、多くの利用者が新しいルールを理解しないまま特に都心部で普及が急速に進んだ結果、違反・事故のケースが増えているのだ。
はっきり言って、普及を最優先にして規制をほぼ無くしたら案の定、交通安全がないがしろにされてしまったということだ。
特に、「歩道を普通の自転車のように走ってしまう」や「飲酒運転をしてしまう」といった問題が発生しており、事故につながるリスクが随分と高まっている。
注)なお、自転車も「自転車通行可」と表示されている以外の歩道では時速6㎞以下でなければ道路交通法違反。知っていた?
この結果は、こんなザル改正をした時点で予想された通りだ。
国交省や警察は何を考えていたのだろう。カネの匂いにつられた政治家たちに何の抵抗もせずに押し切られて。こんな無茶なルール変更を押し通した㈱Luupの腕力(金力?)とロビー活動の巧みさには感嘆するが…。
注)特に目立った推進者は、山際大志郎衆議員を座長とする「自由民主党MaaS議員連盟マイクロモビリティPT」とされる。
実際、都内ではこの危ない乗り物が急増しているので、高齢者や子どもにとって歩道が極めて危険な場所になりつつある。小生の知り合いも先日、怖い思いをした経験を基に、電動キックボードを利用する人たちの無法ぶりに対し「交通ルールを覚えることすらできないんじゃないの」と憤慨していた。
いずれ近いうちに高齢者や子どもを巻き込んだ悲惨な事故が生じ、規制再強化の動きが出てくるだろう。もしそのきっかけとなる事故が(複数人を巻き込み、しかもその人たちに半身不随などをもたらすような)重大なものであれば、一挙に「廃止」に世論は傾くかも知れない。
小生自身は国が急いで再改正しないなら、「都会・都市部では条例で利用禁止すべき」だと思う(田舎道ならぶつかる相手もそういないのでOKかと)。元々こんな危ない乗り物と「ザル」ルールを許可したことが間違いなのだ。