都市を冷やす技

ビジネスモデル

また暑い夏が間近に迫っている。既に先週でも、首都圏で35度前後という人体のような気温が報じられていた(我が家は高台の上にあるため、そんな日中でもエアコンいらずだが、それは特殊な例だろう)。節電との兼ね合いが気になる世相を反映し「都市を冷やす」テーマのTV番組が幾つかあり、興味深く観た。

まず紹介されていたのはビルや個人宅の屋上のグリーン化。屋上庭園は元々人気は高いが、(新築時はともかく)追加建設コストがへたをすると1千万円を超えると、従来云われていた記憶がある。水漏れ防止と、盛り土の重さに耐えられるように補強するためのコストが大きいのである。番組によると、ある大阪の建築施工会社が、金属板で水漏れを防止すると共に、一種のマットを敷くことで盛り土を非常に薄くする施工法を開発し、一挙にコスト削減を実現した。今や全国に販売・施工代理店を拡げつつあるとのこと。個人宅も対象にできるようになると一挙に市場が広がる。

次に紹介されたのが、「すだれ効果」のある特殊ネット。効果的に日差しを遮ってくれるが、風は通してくれるのである。ビルの屋上や店舗の屋根、または業務用エアコンの屋外機をこのネットで覆うだけなので、施工コストは桁違いに安い。それでいながら冷却効果は8~10度前後(使用前後での温度差)と凄まじいものがあった。ビルオーナーや店舗オーナーとしては一考の価値ありである。

面白かったのは溶岩パネル。溶岩を素材に造った外壁パネルである。素材はタダみたいなものでも加工コストはそれなりに掛るので、需要の大半は公共工事向けではあるが、保水効果が抜群によい。この外壁パネルを貼った上で「打ち水」を掛けるかちょろちょろと上から垂らすだけで、一挙に周辺の温度を下げることができる。風通しがよい場所なら冷風を感じるようになるそうだ。なるほど緑と水が多い郊外が涼しいのと同様の理屈なのだろう。進化バージョンとしては、初めから苔を埋め込んであるパネルもある。河川周りや公共施設の水周りにとって、すぐに緑化が図れるという即効性がある。

こうした建物や付属物に工夫をすることで、電気(特にエアコン)に頼らずに涼しい環境を実現する技術がどんどん普及して欲しいものだ。多くの商業施設やビル・家屋で使われるようになることでコストダウンも図られる。そうすれば再生エネルギーの普及と併せて、ニッポンの将来のエネルギー事情は明るくなるに違いない。