都のカスハラ条例は先例となる

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小池都知事は先月の2月20日、カスハラ防止条例の制定を検討していることを明らかにしました。

カスハラ=カスタマーハラスメント=顧客が企業に対して理不尽なクレーム・言動をすることをいいますね。具体的には、事実無根の要求や法的な根拠のない要求、暴力的・侮辱的な方法による要求などがカスハラに当たります。

現時点ではまだ法令で定義されていませんが、厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策マニュアル」では、次のとおりに定義されています。

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの」

東京都がカスハラ防止条例制定を検討しているのは、客からの迷惑行為を受けた従業員が心身に不調をきたし、最悪の場合は自殺に追い込まれるなど、深刻化していることが背景にあるようです。特に都内には飲食店やサービスのお店が多いので、「東京ならではのルール作りが強く求められています」(小池都知事)という認識なのです。

なぜこんなにカスハラが深刻化してきたのでしょう。1968年に消費者保護基本法が公布されて以降、これまで日本では消費者は行政に「保護される者」として捉えられてきたこともあり、客のほうが「立場が上」と考える消費者も多かった(私なんかは、まったくそうは思いませんが)という指摘があります。

確かに、そういった「勘違いした」客によって、暴言や謝罪の強要などのカスハラ行為がそこかしこで行われてきたのかも知れません(こういった行為にまで現れるというのは、日本人の民度自体が下がっているのかも知れません)。

小池都知事は「カスハラはあってはならない。消費者の立場が上との感覚が間違い」ということを周知することも、カスハラ防止条例の目的としています。

個人的には小池さんには策士的な印象を持つためあまり好きなほうではありませんが、この件に関しては「素晴らしい視点」だと思います。制定されれば全国初の事例となりますし、早期の制定を目指しているそうです。これは間違いなく全国の先例になるでしょう。

なお、都のカスハラ防止条例では罰則を設けない方向で検討されているということです(罰則を設ければ一定の抑止になるのは間違いなく、この点では少々物足りません)。

その理由としては、①どこまでを罰則の対象にするかを明確にしにくい、②ひとつの条例ですべての業種に対応するのは難しい、ということが挙げられた模様です。

ニュースでは「悪質なハラスメント行為は刑法の犯罪や民法の不法行為による追及が可能」という意見もあると報じられていましたが、それはかなり悪質で暴力的な場合のみなので、普通のカスハラでは適用は難しいのではないでしょうかね。

いずれにせよ、経営者の方々は(飲食店、サービス事業に限らず)「従業員を守る」という観点から、(国や自治体まかせではなく)「どのようにカスハラに対応するか」を能動的に検討していく必要があるでしょうね。