2月11日放送の「未来世紀ジパング 沸騰現場の経済学」は「日本人が知らない衝撃の韓国!」と題して、超格差社会・韓国の実態を伝えるものだった。「沸騰ナビゲーター」は経済ジャーナリストの財部誠一氏。
グローバル市場での躍進が続く韓国勢。中でもサムスン電機とヒュンダイ自動車が目立つ。特に日本の家電御三家「ソニー、パナソニック、シャープ」が業績悪化に苦しむ中、世界市場でサムスンの勢いが止まらない。テレビにスマホにと、今や「世界トップの家電メーカー」へと成長した。
番組は、そのサムスンが虎視眈々と狙う「世界制覇への野望」に迫る。全米の流通大手(コストコなど)の店頭でサムスンの液晶テレビが圧倒的に目立ち、ダントツの市場シェア(22%以上)で売れている。しかし財部氏は日本の家電トップの言葉として、「液晶テレビで利益を出している企業はない。たとえサムスンでも」と伝える。つまり店頭で圧倒的な物量でサムスン製品を目立たせ、割安な価格で他社の利益を奪う。実際にはアップルが値を吊り上げてくれるスマホで利益を稼いでいると断定する。いわば肉を切らせてライバルの骨を断つ戦略だ。
サムスンが全米を自社のショウルーム化する作戦の舞台は量販店だけではない。派手な街頭広告宣伝に加え、ホテルや空港など多くの人目につく場所でサムスンのテレビばかり目立たせるため、圧倒的に安い価格(もしくは無料)で納入し展示してもらう。お陰で若いアメリカ人は「テレビはサムスン」と既に刷り込まれている。正々堂々ではないかも知れないが、何とも徹底したマーケティング策だ。
アジア金融危機を思い切った経済改革で乗り越え、今や世界市場で勢いづく韓国だが、国内では怒りと絶望が爆発している実態を、番組の後半では伝えていた。知識では聞いて知っていたが、映像で見ると衝撃的だ。
自殺が多発し(世界一の自殺率)、低賃金に不満を募らせる非正規労働者のデモやストライキが各地で起きている(世界で躍進するヒュンダイの最大工場でさえ)。そして江南(カンナム)スタイルの大ヒットで知られるセレブの街・江南の一角には凄まじい貧民街があり、日本の1/7程度の年金で肩寄せ合って暮らす高齢者が、日雇いの職探しに今日もあぶれる姿が映し出されていた。一度失敗したら這い上がれない、しかもどん底まで落ちる社会。これは今の米国社会であり、かっての小泉改革が目指した日本社会の将来図だ。日本はこんな社会にだけはなってはいけないと思った。
ナビゲーターの財部氏が最後に伝えた「テレビを捨てて復活せよ」という日本メーカーへのメッセージは重要だ。基礎技術への過去の投資による分厚い蓄積を活かせ、過去の栄光にこだわることなく独自の強みを活かせる分野に絞って新しいビジネスに果敢に挑戦せよ、ということだ。