調理家電はまだまだ成長途上

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6月19日放送のガイアの夜明け(TV東京系)では、新たな付加価値を持った「調理家電」が取り上げられていました。題して「今までにない”調理家電”を作れ! ~フィリップス…シャープ…開発の裏側~」でした。こうした付加価値商品・サービスのアイディア作りは小生も時折頼まれるので、非常に参考になりました。

最初はオランダの大手家電メーカー「フィリップス」。去年発売された「油を使わずに揚げ物が作れる」という、「ノンフライヤー」は、日本で30万台を売り上げる大ヒットとなりました。人用のミキサーや製パン器などもヒットしています。同社は、日本市場向けに新たな調理家電の開発にかなり前から取り組んでいました。その一つが「家庭で簡単に生麺を作れる機械」です。「うどん」「そば」「ラーメン」「パスタ」など様々な麺を家庭で作れるというスグレもの。

まもなく発売されるこの商品、実はその噂は小生も聞いていました。番組ではなんと去年の6月から開発の裏側を1年間の長期にわたって独占取材。 フィリップスがどのように日本市場を調査し、便利な機能をどう開発したか、番組はその極秘の裏側を明らかにしてくれました。

責任者は日本人。でもフィリップスの調理家電の開発拠点は上海オフィスです。中国製の中華麺製造器はまったく「コシがない」麺しか作れず、現地に住む日本人女性達からすぐにダメ出しされます。しかも麺が出てくるキャップの部分に生地が詰まり掃除が大変そうだというのです。鋭いですね。

彼ら外人と日本人の混成チームは根本から考え直す必要を感じました。そのアプローチは日本の家電メーカーとほぼ同じ。まず日本に同行し、日本のうどんを食べ、その違いを自ら感じます。日本のうどんの多くは断面が四角い形をしており、ここにもコシを出す秘訣がありそうです。

そして伝手をたどって実際の製麺の現場を訪ねます。今や製麺所でも業務用の製麺機が主流です。その動きを観察し、素人には分からないコツを製麺所の職人から聞き取り、それをいかに機械で再現できるかを、試行錯誤と工夫を重ねて実現したのです。それに家庭用の小麦粉でシェア4割をもつ日清製粉の協力を得たことも大きいと思います。やはりノウハウが蓄積されていますからね。

彼らがコシを生み出すために改良したのはキャップにつけた段差でした。それにより三段階で圧力をかけるという、日本で得たアイディアでした。キャップに残る生地の掃除をするための掃除キットも開発しました。

製品完成後、製麺所のベテラン職人が麺の出来上がり具合に感心し、「こんなにうまくできちゃ、お店屋さんが困っちゃうね」と言っていたのが印象的でした。本当にどうなるのでしょうか、心配になりました。でも家電の製パン器が売れたにもかかわらず、街のパン屋さんが売れなくなって廃業した、という話が聞こえてこないのですから、何とかなるのでしょう。

一方、日本のシャープも新たな調理家電を生み出していました。実は、急須を使ってお茶を飲むと、カテキンなどの栄養素をあまり多くは摂取できないのだというのです。そこでシャープは、栄養素を損なわずにお茶をいれることができる、今までにない”お茶メーカー”を開発したのです。これでカテキンをたっぷり取ることができます。

でもこの商品、「コーヒーメーカーがあるのだから、お茶メーカーがあってもいいよね」という極めて単純な発想のような気がしますが、実態はいかがでしょうか。番組ではシャープの開発者たちの苦労が色々と紹介されていました。こちらも目標の仕様(2分以内に一人前に必要な0.6gの粉末を作り、しかも粒の大きさはお湯に溶けやすい20ミクロン以下にすること)は達成しました。あとは生活者に受け入れられるかどうかです。

ヒットしている調理家電の共通点は、新しい食べ方や飲み方を提案し、今までにない機能を持ち合わせたという斬新さにあるのでしょう。新しい調理家電が考え出される可能性はまだまだあります。

ダイソンなどを念頭に置いていたのでしょうが、シャープの開発者が「忸怩たる思い」といった発言をしていました。その通りです。日本の家電メーカーにもっともっと頑張って欲しいものです。