西武信金の逆張り戦法に注目!

ビジネスモデル

昨年から、地域金融機関の課題解決をテーマとするプロジェクトが続いている。今もある信金さんを支援する仕事の真っ最中である。そのため、どうしても関連するトピックには関心が向くようにアンテナが立っているようだ。

昨日のテレビ東京のWBSでは、「西武信金 預金金利「引き上げ」 なぜできる?」というトピックが目を惹いた。案内文は次の通り。

<< 西武信用金庫は3月1日から定期預金金利を3年物・4年物で0.01%、5年物で0.02%引き上げます。日銀のマイナス金利政策の導入を受け銀行などが預金金利を引き下げる中での引き上げとなります。西武信金は企業への貸し出しが右肩上がりで増えていて、その収益で預金金利の引き上げ分を補てんします。西武信金は一部、個人向けの営業を少なくし、貸し出し先の企業を開拓するためにコンサルティングや経営支援などに力を入れています。資金は日銀に預けている当座預金のうち金利がつかない分とマイナス金利が適用される分の約270億円を引き出し、企業の融資に回します。 >>

すなわち、「預金は思い切って利上げして注目を集めることで(薄利多売方式ながら)手間を掛けずに集める」一方で、運用としては①個人向けは放っておいても住宅ローンなどが増えるのであまり手を掛けずに、②むしろ本来の企業融資に力点を置いていく、という戦略だと見受けた。

ほとんどの金融機関が利下げを行っている中で西武信金だけがわずかとはいえ利上げするので、一般の預金者は大いに共感を覚え、西武信金に預金シフトをする人が増えそうだ。「逆張り」はやはり目立つ。

しかも日銀に預けている当座預金のうち、金利が付かないもしくはマイナスになる分のお金は引き出す(どうも日銀に対する嫌みを感じさせるが)というのも小気味いい。非常に正しい戦略である。

多くの金融機関がこうした行動に出れば、そして新たな融資先が開拓され、新興で元気はあるけど信用力が低くて今まで資金が不足していたため思いっ切り暴れることができなかった企業の活動が刺激されれば、景気回復が確かになるだろう。

ただし実際の融資現場では(本部の戦略的意図とは違って)、ベンチャー的な(信用力は低いがやる気のある)新興企業に営業の矛先が向かわず、放っておけばむしろ優良企業に融資部隊の営業攻勢が向かい、結局は金利引き下げ競争が過熱するだけに終わるケースも少なくないだろう。

そうならないようためには、如何に営業活動の矛先を新興企業の開拓に向かわせることができるかがポイントとなろう。営業への戦略の説明・浸透だけでなく、インセンティブをつけてメリハリをつけることが肝要だろう。