先週は世界の方向性を決める2つの大きなイベントがあった。米国大統領選挙と中国共産党大会の開催である。
周知の通り、前者はオバマ氏を、後者は周近平氏をそれぞれ選出した。前者は半年以上にもわたる、国を挙げてのキャンペーンの結果であり、後者は密室での党上層部の暗闘の結果である。
前者についてはいずれ考察したいが、先週時点で最も驚いたのは、周執行部の顔触れが、この時点になっても決まらないことである。その背景として前々から指摘されているのが、「院政」を狙って自らの影響力保持を図る胡錦涛氏が推す有力候補に対し、隠然たる影響力を維持・復活させた江沢民氏のグループが抵抗・対抗している形勢であり、両者が綱引き状態にあることが実証された訳である。中国の長い歴史上、何度となく繰り返された醜い権力闘争である。その歴史が示すのは、こうした動きが国が傾く前兆でもあることである。
世界に向けて非常に開かれた米国の大統領選挙のプロセス(中身には問題も相当あるが)を見た直後だけに、余計にその「密室政治」ぶりが目立つ。この開放度の差はいかんともしがたく、いかに中国が(米国に対抗して)政治・経済上の影響力を拡大させていこうと画策しても、先進国はもちろん、民主的な意識を持ち始めた途上国の多くでも、中国の意思決定の不透明さの根幹を否応なしに意識させられているはずだ。
小生の最近の仕事にはクライアント企業に対し脱・中国を支援するような側面があるが、だからといって中国の動きを無視してアジア展開の戦略を考えることなどできない。経済規模的に日本を抜くまでになり、日中の経済的結びつきが近年急速に強まり、しかも日本は地政学的に大国・中国と対峙せざるを得ない位置づけにあり、中国がどこに向かうかを常に意識せざるを得ない。
明らかに中国内部に民衆の不満というマグマが大きく溜まっている中で、上層部のこうした暗闘・対立は、同国の政治リスクを拡大すると共に、海洋政策に現れているように対外的強硬姿勢に結びつきやすい。東アジアは再びきな臭い時代を迎えようとしていると思わざるを得ない。