空き家対策には自治体の強制力を利かせる大胆な施策を

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コロナ禍によってリモートワーク中心の働き方が普通になったのに伴い、私には近所の散歩コースが色々と増えました。その途中に見かけていつも気になるのが放置空き家です。

それなりに地価が高い場所で、結構な敷地を持ちながら朽ち果てている家屋と、好き放題に伸びてジャングル化している庭木。隣人にとってはこの上ない迷惑です。

しかも野犬などや悪戯で他人が入り込んだりして汚物やごみが巻き散らかされたり、放火されたりする可能性もあり、直接の隣でなくとも近所の人にとっては危ない存在です。

実は全国ではこうした放置された空き家が2013年時点で819.6万戸、2028年には1,700万戸を超えると予想されており、随分と前から問題化しています。以下、公益財団法人の不動産流通推進センターによる情報をベースに話を進めます。

地方でのほうが問題の表面化が早かった気がするのですが、実態としては空き家の実数は大都市圏が多く(まぁそもそも家屋の母数が多いので)、東京都だけで80.5万戸に上り、首都圏1都3県で全国の23.9%を占めるそうです。ご存じでしたか?

賃貸や売却用の空き家では需給のミスマッチが主な理由ですが、戸建持家では高齢者の死亡や転居などがきっかけとなるケースが多く、地域によっても空き家の発生理由には違いがあります。

地価の高い密集市街地や中心市街地で空き家が放置されているのはいかにも「勿体ない」と思うのですが、「敷地が未接道や狭小で、単独建て替えが難しい」「所有者不明で除去不可」「中心商店街の衰退」などが主な事情で、地域丸ごとの再開発でもなければなかなか改善しない実態も見えてきます。

放置空き家を利活用することができない最大の理由は、以下に挙げる「権利関係の諸問題点」です。1)空き家の所有者が不明なことが多い(現在の所有者が登記されていないことが少なくない)。2)しかも他人が放置空き家の所有者を探し出すことは困難。3)放置空き家の処分に際しても問題あり(共有者が分散していると合意を取るのが難しい、所有者・共有者の一部が生死不明なことがある、所有者が判断能力を欠如していることがある)。等々です。

しかしながらここまで状況が深刻になって、しかも地域コミュニティにとっての脅威にさえなっているのだから、個別対処ではなく、しかも個々の自治体に任せるレベルでは既になく、全国レベルで対処する法制度を手当すべきです。この問題を「放置」しておくのは日本社会と経済にとって痛手過ぎます。

きちんと自治体に法的強制力を与えることが基本です。自治体は期限を切って、所有者に対し空き家を取り壊して問題がなくなるよう命令する文書を公告する。期限までに適切な措置がなされない場合、当該自治体が「強制執行権」により、該当する放置空き家を取り壊して更地にする、までは妥当でしょう。

そして執行費用を十分回収できる額で、まずは隣家に更地を買わないか打診するのが望まれます。住み慣れた土地で広い敷地を手に入れる絶好の機会なので、地価より若干高くても買う人は少なくないでしょうし、それが地域の環境をよくすることになります(細切れ不動産化の逆です)。

それが折り合わない場合には、地域内で役所のHPにて情報公開し、買手を探すというのが次善の策です。そして最後は仕方ないので、不動産事業者を通じて手数料を払っての売買に持ち込むという順序です。

いずれにせよ大切なポイントは、公共である地域利益のために、誰のものかを特定できない個人所有権を制限するということに国がお墨付きを与えるということです。 これ、きちんとやれば日本経済にとってはいい刺激になりますし、人気のなくなっている岸田政権にとっても支持率挽回策の一つになると思うのですがね。