3連休を利用して、貯め撮りしてあるTV録画を集中的に(しかも所々早送りしながら)観ている。特にドキュメンタリーものやバラエティ番組の中で部分的に観たいテーマが取り上げられているものは、生で観るのは時間の無駄なので、こうした「タイムシフト視聴」を昔からの習慣としている。お気に入りは「ガイアの夜明け」「ワールド・ビジネス・サテライト」のテレビ東京系か、「BIZプラス」「NHK特集」などのNHKのいずれかである。
その一つで内容的によかったのが11月20日放送の「ガイアの夜明け」での、「町工場からお茶の間へ!~職人たちが大ヒット商品を生んだ~」であった。「魔法のフライパン」と「どんなネジでもはずせる工具」が紹介されていた。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview_20121120.html
一つめは、三重県にある錦見鋳造が2003年に開発した「魔法のフライパン」。鋳物特有の熱伝導率の良さと遠赤外線効果で、食材に熱が伝わりやすく、料理がおいしく作れるというものだ。薄さ1.5ミリという、鋳物の厚さの限界に挑戦した結果は大正解。評判は口コミで広がり、2003年の発売以来、累計10万個を売り上げたという。実は我が家でも購入し使っているので、その良さは実感済である。
2つめは工具店やバイク店など向けの業務用工具製造の老舗中小企業、「エンジニア」。初の一般家庭市場向けの商品として「どんなネジでもはずせる工具」を販売した経緯とその奮闘振りが紹介されていた。デザインを工夫し、恐竜をイメージした「ネジ・ザウルス」とネーミングし、販売。量販店での店頭販売では社長自ら被りものを着て消費者にアピールし、オリジナルのCMソングまで作るなど、従来の中小メーカーの域を超えた取り組みをやってきた。すると120万本の大ヒットにつながっている。
国内での大ヒットはさらには幸運を呼び込む。米国進出を支援する会社というのが声を掛けてきて、米国進出を促したのだ。結果的にはこれも大成功。日曜大工・DIY文化が浸透している米国市場では、この「どんなネジでもはずせる工具」は必需品となるかも知れない。
小生が疑問に思ったのは、この代理店のネーミングセンスとその理屈である。「ネジ・ザウルス」の恐竜イメージを「米国では『恐竜』は可愛いイメージなので、噛みつくイメージにつながらない」として吸血鬼と工具を掛け合わせた「バンプライヤーズ」と変えてしまったくだりである。これは全く出まかせとしか言いようがない。工具そのものがよくできていたのと、実演販売が効いたので結果オーライだったようだが、一歩間違えれば大失敗に終わりかねない。小生も東南アジア向けに「海外進出支援」を行っているので、自戒すべきと感じた。
なお、番組では他にも技術を活かして新しい製品に取り組む例が幾つか紹介されていた。純度の高い鋳物を作る技術を活かした「自由に曲げられるアクセサリースタンド」、金属医療器の技術を活かした「耳かき」、シリコンゴム製品にほこりが付きやすい性質を活かした「ほこり取り」など。特に、瀬戸物の型造りの会社が消費者向け製品を新たにプロデュースする話は面白かった。凹凸を強調した食器は何と1個6300円と高価過ぎるので大して売れるとは思えなかったが、ランプシェードは自分でも欲しい、売れると感じた。こんな製品をもっともっと作ることでニッポンの町工場が元気になって欲しいものだ。