トクリュウ事件の実行犯が騙される理由

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(以下、コラム記事を転載しています) ****************************************************************************

ほぼ確実に捕まり一生を棒に振ることになる、トクリュウ事件の実行犯。こんな損な役回りを引き受けることになる理由は2つしかないと小生は考える。

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高齢者をターゲットにした特殊詐欺や強盗の被害が相次いでいる。数年前に若者に向けて“「闇バイト」はドロ沼への入り口”と警告を発した小生だが、昨今の「トクリュウ(匿流)」(「匿名・流動型犯罪グループ」)による犯罪事件の実行犯たちの手口の粗っぽさ・悪質さを知るにつけ、彼らへの同情の余地はなくなっている。

特殊詐欺は手口が非常に巧妙化・悪質化しており、強盗事件は凶悪化しているというのが最近の「トクリュウ」の傾向だ。特に首都圏の住宅街で、同じ指示役によると見られる強盗事件が相次いでおり、住民を恐怖に陥れている。

その実行役は悉く捕まっている。彼らはSNSでの勧誘宣伝に応じて個人情報を渡したことで、逃げると自分や家族が殺されると脅されて止む無く実行した挙句、報酬は受け取っていない、と皆同様の証言をしているようだ。

この事件の報道に触れた我が家や知人からは当然ながら実行犯に対し同情の言葉はなく、「いくらでも気づけるはずの仕掛けに騙されて人を傷つけ、一生を棒に振る。何と愚かな連中だろうか」とあきれ返る意見で一致している。

経緯を分解してみると、各ステップで立ち止まって逃げることができることが明瞭なのだ。

第1ステップ:SNSでの勧誘宣伝。「簡単な仕事で高額報酬」という宣伝文句に引っ掛かることがそもそも愚か。今どきそんな甘い話があったらむしろ危ないと思えというのは世の常識。ましてや「ホワイト案件」と自ら称する勧誘元は「嘘です」と宣言しているのに等しい。

第2ステップ:SNSでのやり取りの中で、運転免許証の画像など個人情報をいきなり送らせる要求に応じるのは随分と不用意。勧誘元がどういう会社・組織なのか確かめないまま個人情報を送る時点で「悪用してください」と言っているようなもの。

第3ステップ:コミュニケーション手段が、普通のSNSから(SignalやTelegramなど)メッセージが一定時間後に消えるタイプのメッセージアプリに切り替わるタイミングで「こりゃヤバイ」と逃げないことがかなり鈍感。犯罪組織じゃない限りそんなアプリに切り替える必要がない、と普通気づくはず。

第4ステップ:いよいよ勧誘元が正体を現して「やってもらうのは強盗だ。もし途中で逃げたらお前らと家族を殺しに行く」と脅された時点で、まともな頭脳の持ち主なら逃げて警察に保護を求める。いくらヤバイ連中でも、彼らも忙しいのだから、いちいち応募してきた「馬の骨」のアルバイトの家に押しかけていくなどという面倒なことをする訳がない、と考えが及ばないか。

と、それぞれのステップごとに逃げる機会と理由が明白にある。少し頭を使えば「この話に乗るとヤバイ」と気づくはず。ましてや、実行犯の大半は報酬をもらっていないケースが続出していることも最近は報道されている。

でも彼ら実行犯は指示された通りに強盗を実行し、すぐに足がついて捕まっている。指示役以上の連中は、「使い捨て」の消耗品に過ぎない実行役が逃げおおせるようにまでは考えてくれていないからだ。

捕まった実行犯はもうまともな就職はできないだろうから、一生を棒に振ることになる。ましてや被害者が大けがを負ったり死亡したりすれば、初犯でも懲役10年以上、下手をすると20年以上とか食らう。これほど損な役回りを(好き好んでとは言わないが)結局引き受けることになる理由は、大きく分けて2つしか考えられない。

1つは徹底的に情報弱者で思考能力が劣っているというケースだ。新聞・雑誌を読まず、テレビでニュースも観ない。スマホで自分の好きな情報やゲーム等にしか触れていない。そのためこうした「トクリュウ」に関する知識がなくて、まんまと騙される、という具合だ。

もう1つは、実は最初から犯罪だと覚悟している確信犯であるケースだ(こちらの割合は実態的には半分以上、と小生は個人的に思っている)。とにかく目先のカネに困っていて「悪事でも構わないからカネが欲しい」という捨て鉢な感情が底にあり、第1~4ステップのいずれでも「そうだろうな」と薄々気づいていながら前のめりに実行し、「報酬を受け取れない」という事態だけは想定していないのだ。

この連中は逮捕された後、罪を軽くしたい思いから「騙された」「脅されて仕方なかった」と言い訳をしているのだ。つまり本当に「騙された」のは、報酬を受け取っていないという点だけなのだ。いずれ取り調べや裁判で明らかになるだろう。