先日「えっ全然知らなかったな」という話題がNHKの報道で出ていました。何と、肥料に使われているプラスチックの殻が海に流れ込んで、大量のマイクロプラスチック化しているというのです。
そもそも肥料にプラスチックの殻が使われているという話自体、初耳でした。ましてやそれが川や海に流出していることも。これ、隠れた産業廃棄物問題です。
これ実は、高齢化に伴う人手不足に悩む日本の農家の労働負荷を減らすためのアイディア商品なのです。時間差で肥料が水に溶けだすようにプラスチックの殻で包まれている肥料製品で、「被覆肥料」と呼ばれています。即溶け出す普通の肥料と混ぜて散布されることで、肥料を撒く頻度を減らすことができるのです。
これが時間と共に一定の水分が浸透して殻が破れ、中身が溶け出すまでは問題ありません。でも用が済んだプラスチック殻は小さ過ぎて拾うことも難しく、しかも水で分解されることなく、川に流れ込み、やがて海に流されるのです。
そしてそれはさらに微細ないわゆるマイクロプラスチックとなって、やがて海の生き物が食べてしまい、食物連鎖でどんどん蓄積され、いずれ陸の動物、最終的には人間の口に入るという構図なのです。つまり「農家の労働負荷を減らす」代わりに「環境を汚している」という次第です。
プラスチックの廃棄がこうした問題を引き起こすことが近年問題視され、脱プラスチックの動きになっていることは周知の通りです。
ただし普通のプラスチック製品の場合には、不届き者による投棄・ポイ捨ての問題、もしくはごみ処理プロセスが整っていない途上国での問題です。でもこの肥料製品の問題は、ほぼ全量が回収されることなく環境を汚し、やがてマイクロプラスチック問題を引き起こすことが確実なことです。
もっとも、農家の多くはこうした「被覆肥料」の仕組みを必ずしも理解していません。そもそも肥料がマイクロプラスチックとなって川や海を汚すことになっているなどという問題を、自分たちが引き起こしているなんてこと、まったく気づいていないのではないでしょうか。
確かに、農作業の負担を軽減してあげたいという当初の開発意図はまともなものだったかも知れません。でもプラスチック殻が水に溶けないこと、最終的にはマイクロプラスチックとなって川や海を汚すことになってしまうことに、当該製品を販売している肥料メーカーがずっと気づいていないはずはありません。要は、自分たちの利益のために知らん顔して黙っていたというのが真相でしょう。
早急にこの環境公害はストップさせなければいけません。これこそ政府が規制すべき対象です。
日本の大手肥料メーカーの技術力があれば、そして彼らがその気になれば、(多少のコストアップになろうと)脱プラスチックの代替品を作ることは絶対可能です。こんな環境を汚すことが明らかな欠陥製品は即座に止めさせるべきです。