水産庁や漁協はマーケティングに注力せよ

ビジネスモデル

NHK Eテレの「東北発☆未来塾」という番組は、学生に東北の復興を考えてもらう形をとって、色々な業界のリーダーによる数回ずつのちょっとしたゼミナールを行うものである。5月11日(土)の朝のテーマは「漁業のチカラ 魚離れってホント?」。出演しているのは水産庁職員で「水産の復興を考える会」代表の上田勝彦氏、通称「ウエカツさん」。

大きな被害を受けた三陸のワカメ。いま、生育は順調だが、消費は伸び悩む。実は漁業の不調は震災前からの課題なのである。「復興の1年目は、みんなが応援したが、2年目は熱が冷めて値段が下がっている。漁業を支えるのは消費者。食べてもらえないものは取る意味もない」というウエカツさんは、魚の消費を増やすにはどうしたらいいのかを横浜で考えようと、学生を連れていき、横浜の「愛と勇気とサンマ実行委員会」のイベントで魚を焼いて配る。さらには魚を取って食べられる水族館を訪ねる。

その場でウエカツ流簡単魚料理として魚の酒蒸しを披露する。匂いにつられ、子どもたちが寄って来て、おいしそうに頬ばる。ウエカツさんは「魚離れって本当?大人が勝手にラベルを貼っているだけなんじゃないか」と吠える。その通り。子どもたちが「魚が嫌い」と言っているわけではない。おいしけりゃ彼らは食べる。現に子供は寿司が大好きだ。確かにこうしたイベントで魚に触れあったり、釣った魚をさばく場面を見せてあげたりするのもいいが、本質的ではない。

要は、「魚離れ」したのはお母さんたちであり、ファミレスを含む街のレストランなのだと思う。「魚料理は難しそう」「魚をさばくのは大変そう」などと尻込みしている人が大半だから、食卓に上る機会がどんどん減っているに過ぎないと思われる。ならば漁業の復調のためには料理する人たちに、魚を素材とする料理をどんどん作ってもらうべきだろうと思う。

むしろ、必要なのは魚料理のマーケティングだ。例えばABCクッキングや東京ガスの料理教室などに魚を素材として無償提供して、花嫁修業の女性たちや引退したオッさんたちに魚料理のレシピを一杯覚えてもらうことだ。大消費地の自治体を通じて地元の料理サークルに同じようにアピールするのもよい。また、クックパッドや楽天レシピなどのレシピサイトに(比較的簡単に作れて美味しい)魚料理のレシピをどんどん載せ、並行して食品スーパーなどに魚料理のキャンペーンを持ち掛けるべきだ。ファミレスに新しい魚料理メニューを積極的に提案すべきだ。同時に、テレビの料理番組にも提案して、魚料理を扱ってもらえばよい。調味料メーカーともタイアップして、アピールの場を増やせばよい。

水産庁や各地の漁協の職員がすべきことは、そうしたマーケティング活動である。特殊なイベントより地味な日々の売り込みこそ重要である。ましてや漁業権の調整や政治家への陳情、漁協関係者同士で酒を酌み交わすことが主たる仕事と勘違いしてはいけないと思う。