植物由来のゴミから作るバイオコークスは世界を救える

ビジネスモデル

11月16日(日)に放送された「夢の扉+」(TBS系)は「お茶カスが、わずか1時間で“夢の燃料”に変わる!?ゴミから作る新エネルギー資源で世界を救え!」でした。ドリームメーカーとしてフィーチャーされていたのは近畿大学理工学部教授でバイオコークス研究所副所長の井田民男さんでした。とにかく夢のある話でした。

お茶のカス、木クズ、もみ殻、バナナの皮、コーヒーの実、等々。世界中どこの国にもある植物由来のゴミを原料に、石炭に代わりうる固形燃料を作り出すという夢の技術です。ゴミを約10分の1にまで圧縮できるので、運搬コストも安く済みます。それを開発したのが近畿大学の井田教授です。

植物は地中で約3000万年もの月日を経て石炭に生まれ変わったのですが、井田氏はこれを1時間で再現するというのです。つまり、この地中の熱や圧力といった“自然の力”を解明し、再現し、廃棄処分されていたゴミをエネルギー資源に生まれ変わらせてしまうという技術なのです。

もしこれを投資話として訊いたら、確実に「詐欺だ!」と判断されるでしょうね。実際、井田氏が初めてこの技術を専門家に公開した際には、誰もが信じずに手品のタネを明かしてやろうとばかりに井田氏の手元を見つめていたそうです。

植物性資源から作られるこの「バイオコークス」は、石炭に比べて、二酸化炭素や酸性雨の原因となる有害物質の発生を抑えられる、夢のリサイクル燃料です。とはいえ、「バイオコークス」の実現ポイントとなる熱と圧力の組み合わせを見つけるのには非常に苦労をされて、ようやく見つけたものなのです。

実際の製造は難題で、材料の水分次第でコークスの中身が中途半端なままになったり、逆に爆発してしまったりと、素材ごとに悪戦苦闘を重ねる必要があるのです。

でもこれについても最適の水分量を見つける方法を開発されたようです。そして北海道の鉄工工場でバイオコークスを使ってもらい、実際に製鉄に必要な温度(摂氏1500度以上)にまで上がることを確認できていました。素晴らしいです。

井田氏は今年9月、マレーシアへ飛び、椰子の実のカスからバイオコークスを作るという、世界での実用化を視野に入れた挑戦が始まりました。既に大量生産にもメドが立っているようです。また、福島の除染ゴミを圧縮することにも応用できるかも知れないそうです。

理工学部の自室でお茶を立てて飲む静かな姿とは対照的に、井田氏は研究開発に対してはとてもエネルギッシュな科学者なのだと感じます。またまた近大発の有用な技術が実用化される日も遠くないと期待したいですね。