日産の経営の行方

ブロググローバル


発足したばかりの第2次トランプ政権が矢継ぎ早に世界を震撼させています。

特に日本にとって脅威になりそうなのが、メキシコ・中国・カナダという米国の輸入額トップ3への関税大幅強化です。

中国への関税10%増額というのも中国の景気をさらに冷やしそうなので、多くの日本企業がそれなりに(つまり薄く広く)影響を受けますが、それ以上に一部企業にとてつもなく(つまり狭く深く)効きそうなのがメキシコ・カナダへの関税25%という話のほうです。

なにせ従来の協定(USMCA)のお陰で今まで0%だったのがいきなり25%と跳ね上がるのですから、本当に実施されたら途端に米国市場で売れなくなるのは目に見えています。米国への輸出拠点としてメキシコ・カナダに製造工場を建てまくってきた日本のメーカーにとっては目も当てられません。

その代表は自動車メーカーです。日産なぞは再生計画の中で米国工場を大幅縮小することを検討していたのですが、従来稼ぎ頭だったメキシコの工場も大幅縮小を余儀なくされるかも知れません(既にメルセデスとの合弁工場は高級車の不調で生産体制を半減しています)。

でもトランプ大統領の本当の狙いは、関税強化を盾に様々な政治交渉(対メキシコでは不法移民の流入阻止への協力など)を有利に図るための手段だと目され、必ずしも25%という高率の関税が実現することに決着するとは限りません。事実、交渉のために関税強化の実施は1か月延期されたようです。

とはいえ落し処が分からない今、多くの日本メーカーが不安にさいなまれて今後の交渉の行方を見守ることになりそうです。

この件もあり、日産の経営の先行きには不安が渦巻いています。「この件もあり」の所以は、この一両日で明らかになってきた「ホンダ―日産」の経営統合話の頓挫です。

両社は昨年12月から水面下で統合協議を重ねてきました。しかし巨額の債務を抱える日産の意思決定の歯切れの悪さ(リストラ計画の遅れと中途半端さ)に対し、ホンダはかねてから「この期に及んで」と苛立ちを表していました。

このような状態のまま同じ持ち株会社の下にぶら下がる形で「経営統合」する形になると、様々な場面で日産が足手まといになる未来が目に浮かんだのでしょう。ホンダは経営統合協議が打ち切りになるのを覚悟して、「子会社化」提案に踏み切ったと見られます。

それに対し、日産の取締役会が強い反発を示したのです。そして今日、日産は統合協議の打ち切りを通告したと報じられています。

この経緯に対し、昨日の株式市場は「ホンダは大幅上げ」「日産は大幅下落」という好対照を見せています。さもありなんといったところでしょうか。

正直、両社の経営統合協議の先行きには非常に怪しい雲行きがあったので、このブログで採り上げようと思っていたところでした。現実が一足先に姿を現したといった感じです。

問題は日産の今後です。国内でも人気が低迷し、ましてや稼ぎ頭だった中国ではほぼ全滅、北米でも大幅値下げしないと在庫が減らない状況です。つまり大市場でことごとく「負け犬」状態になってしまっているのですから、製品企画・開発から立て直す必要があります。

日産ほどの大企業になると、これは「言うは易く行うは難く」の領域で、その立て直しの間のマイナスキャッシュフローを支える金融機関の支援と、SDV化とEVシフトを進めながら部品や車台の共通化を図る共同開発パートナーが不可欠です。

「SDV化とEVシフト」については前回1999年のリストラ時にはなかった要素で、問題はより複雑化している訳です。こんな超困難な再建を単独でできる経営者が日産内にいるのでしょうか(いたらとっくに頭角を現しているでしょうね)。

かといって再び同業者に支援を求めるとなると結局傘下に入ることになり(ルノーの時と同じ)、「じゃあホンダの子会社になっても同じことだったじゃない」と堂々巡りに陥るのは目に見えています。

こうなると、一巡して再びホンダに頭を下げて子会社にしてもらうのか、もしかすると傘下にある三菱自動車の元の親会社・三菱商事に救いを求めて傘下に入れてもらうといったアクロバティックな再建策だって飛び出てくるかも知れません。

社員と取引先は気が気じゃありませんね。