最近、とても気になる記事をたまたまニュースサイトで知りました。しかも韓国の自動車専門紙の記事です。
いわく、「2010年代に入って日本車のデザインは…やや不可解な姿に変わっている。パフォーマンスも昔ほど印象的なモデルが出ていないのが事実だ」「多数のモデルが、ガンダムのようなデザインを採用している」「このままで大丈夫か?」と嘆いているのです。加えて「当時は破格的で最先端だったそれら技術が今日まで使われている」と、技術的にも優れたものがなくなっている様を指摘しています。
http://korea-economics.jp/posts/21092507/
韓国の日本に関する記事の大半は全般的に特殊なバイアスが掛かっており、韓国内の内向き視点のみを気にかけており、客観的な観点にかけるため、私は基本的に無視しています。しかしこの記事は珍しく客観的かつ的確と感じ、それだけに気になるものです。
自動車は日本の産業の屋台骨を支える業界です。私は知人に自動車関係者もそれなりに多く(実は大学での所属クラブが自動車部でした)、とても大きな懸念材料です。色々と考えると、あの飛ぶ鳥を落とす勢いだった業界の凋落の予兆を感じざるを得ません。実際、この記事の指摘は私もこの20年以上感じているものです。
日本のクルマ市場が成熟するにつれて、国内的にはトヨタ車が半分以上のシェアを取り、一方で輸入車シェアが長年にわたって存在感を拡大してきました。でもこれらを裏返すと、日産・ホンダなどの競合大手がどんどん国内シェアを落としていることに他なりません。そして日本市場で売れるクルマは海外であまり売れないか、そもそも販売していないのです。いわゆる「ガラパゴス化」しているのです。
私自身を振り返ってみても5~6代続けて外国車を購入していますし(我が家はフランス車ばかりなので極端かも知れませんが)、それなりに所得のありそうな知人の多くも「外車」(今どき、こういう言い方も廃れたかも)オーナーばかりです。つまり上位車種需要がかなり外国車にシフトしてしまっているのです。世界に名だたる車メーカーのお膝元でこんな現象があるのは日本と米国だけです。そうすると、日本メーカーも米国メーカーのように国際的競争力を失くす途上にあるのかも知れません。
ではなぜ外国車にばかり上位車種需要が集まっているのでしょう(以下は私個人の所感です)。一番大きいのはデザインの違いです。正確に言えば、セクシーなデザインの有無です。
日本車のデザインはすべからく(高級車でも中級車でも)凡庸です。まったくセクシーではありません。日本でもアジアでも、そして比較的強いとされる米国でも、目にする日本車はいずれもつまらないデザインです。冒頭の韓国の記事がいう「ガンダムのようなクルマ」だったり、鼻のひしゃげた不細工で可愛くない犬を想起させる車だったり、横から見るとブリキかと思うほど単調です。セクシーさからは程遠いのです。
それに対し欧州車はデザインの主張が明確で、それぞれ個性的でセクシーなデザインのものが多いのです。日本の道路上でも、デザインが目を惹くのは圧倒的に欧州車なのです(もちろん凡庸なものをわざわざ輸出車ラインナップに載せないということでしょうが、各々の本国でも凡庸なデザインのものは新興国の安価なクルマなど、かなり限られています)。
なぜこんなに日本車のデザインがダサくなってしまったのか。
燃費や機能、便利さに重点を置いたものが普及価格帯の車種で圧倒的に求められることに引っ張られている傾向もあると思います。しかしそれ以上に若者がクルマを欲しがらなくなって、若い女性が素敵と思うクルマじゃないと売れないという事情がなくなってしまったからではないでしょうか。
同じ女性でも子育て世代はセクシーさを求めません。または自ら送り迎えの「下駄替わり」に使っていればコンパクトで取り回しが利き、社内の使い勝手のほうに目が行きますし、コストが重要です。実用本位になれば外観は後回しになります。需要層の中核たるミドル世代の、しかもお金に余裕がない人たちは実用的な基準を最優先して選ぶため、軽自動車と同様の購買基準が普及車に広がり、そして今では中級車にまで及んだのです。これって実は米国で起きた、「ダサいコンパクトカーが続出した」事情とそっくりです。
一方で国産の高級車を買うのは高齢の男性のみ(彼らの妻は車の希望を口にしません)になってしまったのではないでしょうか。中壮年の男女でそれなりにお金があれば、選択肢は国産車ではなく自ずと欧州車になってしまうのです(中にはアメ車大好きという人たちもいますが)。鶏が先か、卵が先か、完全に悪循環です。
そりゃあクルマメーカーもデザインに投資しようと躍起になりませんよね。自ずと世界的レベルのカーデザイナーは欧州車メーカーの仕事を優先し、日本車は後回しになります。これが今、我が国の自動車市場で起きていることではないでしょうか。