テレビ東京のWBSで「ヒットの種は“社外”から」と称して、幾つかの「オープン・イノベーション」例が紹介されていた。日用品大手のP&G、オフィス家具メーカーのイトーキ(オープン・イノベーション」専用拠点と会員制)、制御・計測器メーカー最大手の横河電機(必要な技術を公開して社外の提案を求める)が取り上げられており、興味深いものだった。
とりわけ凄かったのはP&G。2000年から“コネクト&デベロップ”というキーワードで「オープン・イノベーション」に積極的に取り組んでいることは有名である。自社でも約9300人の技術者を抱えながら、何と最近の新製品やサービスの50%が外部からの技術やアイディアによるものだという。
紹介されていた商品は、例えば「ファブリーズ アロマ」。芳香剤を少しずつ空気中に染み出させるためイタリアの浸透材メーカーの技術を使ったという。驚いたのはほこり取りのモップ。ベースの技術はライバルであるユニチャームから買っているのだという。利益率は下がるが、早く商品化するため(平均5年が1~2年に短縮するという)敢えて競合からの技術導入に踏み切っているのである。
さすが世界のP&G、ちっぽけなプライドに拘らず、外にあるアイディアや知見をどんどん活用しようという姿勢がよく伝わった。きっと外部からのアイディアや技術の持ち込みも凄くあるだろう。それだけP&Gには色々な情報がもたらされているのではないか。そうした外部からのアイディアや技術と、自社の技術および世界一といわれるマーケティング力と販売網を組み合わせることで、逸早く新しいタイプの商品を開発することができるので、強者の戦略でもある。ちょうど医薬のグローバル大手が、自社開発(これは確率が低い)に加え、医薬ベンチャーが既に開発した新薬を買収・提携して製品化する(これは確率が高い)方向にシフトしつつあるのと同様だ。
それにつけても世の中の大半の大手日本企業が未だに「すべて自社で」というスタイルに拘っている状況は随分マズい(そういえば経営コンサルに頼むのを恥だと思っている日本の経営者がいまだ多いが、同じ文脈かも知れない)。「オープン・イノベーション」は自社の強みを否定するものでは決してない。むしろ逆だ。ちゃんと強みがあるからこそ、それ以外の部分では社外の力をうまく使って速く確実な事業展開をできるのである。
経営が危機的な状況になってはじめて外部との提携に積極的になる(シャープのような)ケースが多いが、そうした段階になって近寄ってくる連中には「ひさしを貸して母屋を乗っ取ろうとする」輩も混じってくるので、却って危険である。経営が健全な段階から、外部の知恵や経験をうまく取り込む「柔らかさ」が欲しいものだ。