三井物産が大日本印刷(DNP)に日本ユニシス(NUL)株式を一部譲渡し、DNPがNULの筆頭株主になるというニュースが飛び込んできた。NULは小生が5年間所属した古巣でもある。
http://japan.zdnet.com/cio/analysis/35020281/
このニュースに対しOBからは「物産に見放されたか」という嘆きの声も聞かれたそうだが、小生の見方は違う。むしろ前向きな受け止め方である。これはNULにとって飛躍の機会となり得る、と。
実は小生は以前(ただしNUL退職後)、NULの株式を保有していた。株主総会で当時の籾井社長に対し幾つか質問した件の一つに対し、近いうちのプロパー社長の誕生を約束してくれた。そし実際に後継社長はプロパーの黒川氏であった。籾井氏は約束を守ってくれたのである(小生がNULを退社したため、籾井氏に対し面白くない気持ちを持っていると感違いしている人がいるかも知れないが、籾井氏とは考えを異にする部分があったとしても人間としてビジネスマンとして尊敬していることをここで改めて言いたい)。
もし今後もNULにプロパー社長を続かせるのであれば、物産にとってのNULの価値は大きく減じるのである。なぜなら物産グループには既にMKIという(物産が株式の過半数を押さえ幹部を物産出身者で固めた)SI企業がおり、忠実にMKIの意向を反映させることができる。それに対しNULは規模はでかいし技術力も上だが、「物産なにするものぞ」で育ってきたプロパー社員が幹部の多くを占め、物産にとっては扱いにくい存在だ。物産の副社長クラスや部長・次長の「天下り」ポストを確保するぐらいしか確実な価値はなかったのである。しかしそれを、籾井氏は物産本社と交渉して止めさせたのではないか。当然、NUL社内の士気を高めるためである。
今回の株式譲渡はその代償である。「天下り」ポストを確保できないNULの株式を保有しておく必然性は、物産にはなくなっていた。しかも(最近のSI業界全体に共通するが)同社は業績低下により株価が低落し、この先の見通しも不透明である。少なくとも物産の株主に対して株式保有の必然性を説明できなくなっていたのだろう。
さて振り返ってDNPとNULである。2社は多分これまでに色々なビジネス協業をやっているので、互いの幹部同士も旧知のはずだ。IT業界に対し並々ならぬ意欲と興味を示してきたDNPは、水面下で物産に売却を働きかけていたのかも知れない(いずれ真相が聞こえてくるだろう)。
少なくともDNPが関与するIT絡みの事業機会には今後、NULにまず声が掛るだろう。今までだったら(物産がMKIを優先するため)独力でそうした事業機会の開発をやらざるを得なかったNULとしては、事業提携機会の多いDNPが親会社になったことは、同社の事業機会の範囲を一挙に拡げるだろう。昔の仲間には「おめでとう」と言いたい。少なくともインドのIT企業へ売られる(という可能性があったのだが)よりもずっとハッピーな展開であると信じる。