日本の家電技術者の反撃を見たい

ビジネスモデル

6月4日放送の「ガイアの夜明け」では「リストラに負けない! 家電戦士たちの逆襲」を観た。この数年、業績不振にあえいだ日本の大手家電メーカーが軒並み正社員の「リストラ」を実行してきたが、(技術者のうち一部ではあるが)反撃に移りつつある人たちの奮闘を番組は伝える。

今回の主な対象は2つ。旧松下電工を早期退職してアイリスオーヤマに中途入社した技術者と、パイオニアの退職者だけで立ち上げたオーディオ製品ベンチャー「スペック」である。

今年、アイリスオーヤマは白物家電事業に本格的に参入するため、元大手家電メーカーの人たちの中途採用を積極化した。シャープとパナソニックの退職者を狙って大阪で、説明会を開きR&Dセンターを開設した。この様子は幾つかの報道番組で既に目にしていた。

番組では、アイリスに途中入社した旧松下電工技術者に密着取材。3ケ月にわたる研修期間に仙台で単身赴任を続け、アイリスの開発スピードと一人で担当する範囲の広さに戸惑いながらも、頑張る姿に感情移入しながら観ていた。失敗もあったが何とか正式採用になり、大阪のR&Dセンターに配属された際に「ヤルゾー!」と叫んだ彼の、家電開発の仕事を続けられることの大きな喜びが伝わってきた。

それと同時に、パナソニックやシャープなどの経営陣の不甲斐なさや本社スタッフの多さが頭をよぎった。あの官僚組織が組織のあらゆるスピードを削ぎ、意思決定の中途半端さをもたらしたのだから、本来なら技術者をリストラすべきではないと感じた。

番組後半では、2010年元パイオニア技術者たち9人が退職金を元手に立ち上げた、オーディオメーカー「SPEC」を採り上げていた。平均年齢は55歳というおやじベンチャー企業だ。社長は元パイオニアの国内マーケティング担当の取締役だった石見周三さん(60歳)。パイオニア時代は自らリストラを指揮する立場にあったという。

SPECの主力製品はアンプ、しかも約120万円と高級品。買える人は少なく、地方の販売店回りや視聴会に奔走するが、売上は伸びない。しかし彼らは次の手を用意していた。

高品質でデザインがよく、安価な(20万円台)の商品を開発していたのだ。ヨーロッパ市場を主ターゲットにすべく、ドイツの展示会(High End)に期待の新製品を持ち込む。

これが大好評で、ブースにはバイヤーたちが押し掛ける。音の良さ、デザインの良さ、バイヤーたちの称賛が続く。その場でデモ用に現物を買うバイヤーすらいたという(間違いなく異例である)。帰国直後には内示と注文が相次ぐ様子が放映された。彼らの心意気が近い将来報われることを願って止まない。